研究課題/領域番号 |
20K17042
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
姫野 美沙緒 東京大学, 定量生命科学研究所, 特別研究員 (80706416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / レポーターウイルス / 肝硬変 / 抗HBV薬 |
研究実績の概要 |
本研究では蛍光活性化タンパク質(Y-FAST)を用いたB型肝炎ウイルス(HBV)検出系の構築とその応用を目指している。 はじめに、HBV感染細胞を可視化するためのベクター構築およびベクターの細胞への導入条件について検討した。現在、HepG2細胞がHBV感染細胞として汎用されていることから、HepG2細胞へのトランスフェクション条件を詳細に検討したところ、リポフェクション法によって導入効率50%を達成することができた。また、我々はこれまでにヒトiPS細胞から分化誘導した肝細胞と類洞内皮細胞を用いた共培養系においてHBV感染系の樹立に成功している。そこで、iPS細胞から肝細胞を調製しベクターの導入効率について検討したところ、HepG2細胞と比較し効率は低かったがベクターの導入を確認することができた。 使用したY-FASTは蛍光活性化試薬に反応し蛍光を発する特徴を有している。そこで、ベクター導入細胞に蛍光活性化試薬を添加し、Y-FAST陽性細胞の検出を試みた。フローサイトメトリー解析によってY-FAST陽性細胞を検出することに成功し、今後、本システムを完成させることでHBV感染複製細胞を検出、分離可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光活性化タンパク質を導入したHBVベクターについては導入部位を複数検討して構築中である。 HBVを複製させる細胞については細胞種、培養条件ともに最適条件を検討している。 また、ベクターのトランスフェクション効率についてはリポフェクション法では効率がやや低いことが明らかとなったため今後改善予定である。ベクター構築後の解析方法についてはセルソーターや蛍光顕微鏡を用いた方法を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
構築したベクターのうちHBV産生能の高いものを選ぶ。 これまでの試行実験でリポフェクション系のトランスフェクションは遺伝子導入効率がやや低いことが分かったため、今年度はエレクトローポレーション法も加えて遺伝子導入を試みる。また、これまでに作製されたHBVが恒常的に発現する細胞は肝がん細胞株であるHepG2が主流である。他の細胞と比べHBVを産生しやすい細胞条件があると考えられるが、未だ詳細については明らかとなっていない。細胞内で機能している転写因子や自然免疫系についても考慮しながら、他の細胞種においてもHBVが恒常的に複製可能であるか検討する。 HBV恒常的産生細胞については作製が困難である可能性がある。このため宿主のゲノム内に組み込む方法なども可能であるかどうかについて検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染蔓延防止のため様々な影響があった。具体的には、研究機関の方針により立ち入りが制限されたことや、研究機器修理の遅延があり、さらに、研究関連製品が入手困難であったことおよび、子の保育園の長期休園や感染者発生に伴う臨時休園などである。このため、購入できなかった必要物品の購入を次年度に行う。また参加予定であった学会も中止や延期等があった。これにより今年度は学会参加費としての経費を使用していない。次年度においては現在徐々に研究関連製品が入手可能になっているため、それらを購入して引き続き研究を行う。また国内学会に参加予定である。
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