本研究は蛍光活性化タンパク質(Y-FAST)を有する組換えB型肝炎ウイルス(HBV)を作製し、それを用いたウイルスの病態解析や薬剤スクリーニングへの応用を目的とした。 本研究において、HBV Coreタンパク質の領域にY-FASTを挿入した組換えウイルスを作製することに成功した。ウイルスをコードしたplasmid DNAを導入したHepG2細胞のうち50%の細胞において強い蛍光が観察された。Y-FASTは蛍光活性化試薬を添加することで蛍光を発するが、試薬添加によって接着状態の細胞だけではなく、フローサイトメトリー解析による検出にも成功した。また細胞培養上清を回収し密度勾配遠心法にて成熟ウイルス粒子であるDane粒子を分離したところ野生型ウイルスと同じ画分に分離され、ウイルス粒子が形成されていることを確認した。しかし感染細胞を効率よく検出するためには更なるウイルス液の濃縮か、複製レベルの亢進が必要であることがわかった。本研究では肝硬変の始発点とされるHBV感染細胞による静止期星細胞活性化の経時的変化についても観察した。その結果、HBV感染細胞と静止期星細胞の共培養が現状の培養条件では困難であることを明らかにした。本研究のシステムを評価することやウイルス収量の向上に資するため、ウイルス複製に効果が見込まれる新規合成化合物を培養系に添加した際のHBV複製レベルを調べた。その結果、評価系のコントロールとして使用でき、HBV複製メカニズムの解明に使用可能な新規化合物や、HBVの細胞外放出を抑制する新規化合物を同定した。 本研究の検出感度をさらに改善することで、これまで煩雑で破壊的試験であった培養細胞を用いたHBV感染実験を大規模スクリーニングや経時的観察と病態解明の優れたツールとすることが出来る。
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