本研究では、食道上皮にアセトアルデヒド(AA)を長期間曝露することにより誘発される突然変異パターンについてCOSMICシグネチャー16に着目して検討した。In vitro実験では、正常ヒト食道由来の食道上皮細胞(EPC2-hTERT)およびALDH2*1/*2遺伝子多型保有者由来の食道上皮細胞(KEPC-HE1-hTERT)からシングルセルクローニングして得た細胞を使用した。それぞれ、フラスコ内で約2カ月間AA(0mM、0.2mM)添加培地で培養後、シングルセルクローニングしDNAを抽出した。EPC2-hTERTのAA非曝露と曝露の全ゲノム解析(各条件:1フラスコから2サンプル)では、変異数は全ゲノム領域で平均1243.5、1644.5、全エクソン領域で平均11、11であった。KEPC-HE1-hTERTのAA曝露の全ゲノム解析(1フラスコから2サンプル)を行ったが、非曝露細胞の解析ができていないためこれらを比較できていない。In vivo実験では、野生型マウスに約11カ月間水又は10%エタノール(Et)を経口投与し、食道上皮細胞を初代培養、シングルセルクローニングしDNAを抽出後、全ゲノム解析(各群:3匹から計6サンプル)を行った。Aldh2KOマウスでは約8カ月間水又は10% Etを投与し、同様の手順でDNAを回収し全ゲノム解析(各群:3匹から計6サンプル)を行った。野生型マウスの水投与群、Et投与群で変異数は全ゲノム領域で平均1852.2、1572.3、全エクソン領域で平均13.7、41であり、Aldh2KOマウスの水投与群、Et投与群で全ゲノム領域で平均959.8、1042.7、全エクソン領域で平均10.7、12.3であった。Mutational Patternsを用いたシグネチャー解析では、AA曝露との関連が示唆される突然変異パターンの同定に至らなかった。
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