近年、抗PD-1抗体を中心とした癌免疫療法が多くの癌種に効果を示しているが、膵癌の治療反応性は悪い。我々は血液中自己抗体の臨床的意義を検討しているが、その中で、免疫抑制分子であるPD-1に対する抗体反応陽性者が、膵癌患者でも一定数存在することがわかってきた。本研究は、次世代の癌免疫療法の可能性を広げることができるバイオマーカーを同定することを目標にしている。前年度までに、膵癌患者の血清中抗PD-1抗体価をELISA法で測定し、進行期において抗PD-1抗体価が高い群で生命予後の延長を認めることがわかった。今年度の目標は、切除標本を用いて免疫染色を行い、免疫応答の違いを解明していくことであった。 標本の選定は、StageIII以上は手術適応とならない為、リンパ節転移を有するStageIIB症例とリンパ節転移を有さないStageI-IIA症例とし、膵癌主病巣とリンパ節において、線維化の程度およびリンパ球の免疫応答関連マーカー発現を検討した。線維化の評価はαSMA染色を用い、リンパ球の活性化状態の評価は、PD-1、CD45R0染色を用いた。主病巣の膵癌主病巣では癌は強い線維化を伴っていることが、免疫細胞浸潤を拒絶している可能性があり、癌周囲の線維化関連マーカー発現の程度と免疫細胞の活性化状態について標本評価を行っている。リンパ節では通常線維化を伴っておらず、癌がむき出しの状態であるため、免疫応答が生じやすい状態と考えられる。リンパ節転移の有無により、免疫応答に違いがあるかをリンパ球活性化関連マーカーで検討し、血中の抗PD-1抗体価との関連を明らかにしていく。現在、免疫染色の条件設定は完了でき、病理標本の準備・評価中である
|