研究実績の概要 |
免疫抑制分子であるPD-1に対する抗体陽性反応陽性者が膵癌患者でも一定数存在することを発見し、化学療法の有効性予測バイオマーカーとなり得るか検討した。膵癌化学療法患者の血清を使用し、間接ELISA法で血清中抗PD-1抗体価を測定し、中央値で2群に分けて検討を行った。2群間での年齢、ステージ、化学療法内容などの患者背景において差異がない集団で、血中抗PD-1抗体価が高値群は低値価群と比較して有意に生存期間が延長していた(高値群966日 vs 低値群342日,p=0,019)。抗腫瘍効果を見てみると、DCRが高値群で有意に高いことが判明した。切除検体を用いて腫瘍部のPD-L1染色と血清中抗PD-1抗体価の関連性を検討したが、有意な関連はなく、抗体産生は個体差によるものと推測している。抗PD-1抗体陽性患者は腫瘍細胞上のPD-L1との結合を阻害し、T細胞性の細胞性免疫活性に寄与しているものと推測する。また、腫瘍部の線維化の検討においては、αSMA/PD-L1、CD8/PD1,CD8/CD28の免疫二重染色を行い、免疫バランスと治療効果について標本検討中である。 追加研究として、胆道癌の生検検体(内視鏡検体および肝生検)を用いたバイオマーカー検索の可能性を検討するため、胆道癌に対して免疫チェックポイント阻害剤の有効性が示されているPD-L1に注目し、胆道癌患者の生検検体と切除検体でのPD-L1染色を行い、一致率を検討した。PD-L1陽性率(cut-off 10%)は全体で20%(9/45)であり、生検検体との陽性一致率は56%(5/9)、陰性一致率は100%(36/36)であった。生検検体を用いたPD-L1染色は可能であり、抗体治療薬投与のコンパニオン診断として有用である可能性を見出した。
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