研究課題/領域番号 |
20K17051
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
安部 真 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00819104)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞シート / 上皮細胞シート / 創傷治癒 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、岡山大学における細胞シート研究の体制構築と、上皮細胞シートの作成を行った。岡山大学が定めた新型コロナウイルス感染拡大防止処置にともなう感染多発地域への移動制限に伴い、本年度は当初予定していた東京女子医科大学と連携した細胞シートの作成(特に脂肪由来間葉系細胞シート)が困難となったため、本学のみで施行可能な上皮細胞シートを用いた研究を中心に施行した。 具体的には、温度応答性培養皿を用いて上皮細胞シートを製造し、本学環境においても重層化した上皮細胞シートが製造可能であることを確認し、また、本実験に備えて、安定した品質の上皮細胞シートを製造できるように本学環境下での最適な製造工程を設定している。具体的には、当初はコレラ毒素を用いた上皮細胞培養培地を使用する予定であったが、本学での使用が困難であったことから、イソプロテノールを用いた上皮細胞培養培地に変更し、上皮細胞の培養が可能であることを確認している。また、培養中の培養液における創傷治癒に係る種々のサイトカイン分泌量を検討するために、培養液を採取している。今後細胞シート製造を繰り返し、培養液を採取したのちに、ELISAを用いて分泌量を測定比較する。 また、ミニブタを用いて実際に消化管に創傷部位(粘膜切除)を内視鏡下に作成し、同部位に上皮細胞シートを移植することで得られる創傷治癒に関する分子生物学的変化を測定するため、創傷部位の検体を採取している。今後採取した検体をRT-PCRを用いて創傷治癒や再上皮化、線維化に係るタンパク発現について解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
岡山大学が定めた新型コロナウイルス感染拡大防止処置としての感染多発地域への移動制限のために、東京女子医科大学および東京医科歯科大学より技術協力を得ることが困難となったため、間葉系細胞シートの製造について進捗が遅れている。本研究は上皮細胞シートおよび、間葉系細胞シートを積層化することを目標としているが、上皮細胞シートの製造に関してはおおむね順調に進展しており、実際にミニブタに移植後の検体採取を一部終了した。しかし、ミニブタを用いた大動物実験(神戸の飼育施設で施行)に関しては、上記移動制限により再開の目途がたっていない。今後の感染状況や本学規定の変更により実験再開の可能性もあるが、代替の細胞ソースの使用についても検討している。 岡山大学での研究を始めるにあたって体制構築も行えているが、全体の進捗はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上皮細胞シート単独における特性解析にもちいる検体の採取を先行して行う。間葉系細胞シートはオンラインでの技術指導の環境を整えていく。環境が整い次第、製造を開始する。間葉系細胞シートの安定した製造が可能な本学環境下での製造工程を設定し、積層化細胞シートの製造を行っていく。 予定されている大動物実験のパートでは、ワクチン接種施行後は移動制限が解除していく予定であるが、大動物実験が開始されるまでは代替の細胞ソースを購入し、研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
岡山大学の定めた新型コロナウイルス感染拡大防止策に伴う感染多発地域への移動制限により、令和2年度の途中から、ミニブタを用いた大動物実験(神戸)および間葉系細胞シートの技術指導(東京)が困難となった。そのため、大動物実験および間葉系細胞シート製造にかかわる費用を令和3年度に繰り越した。今後オンラインでの技術指導を行うとともに、ワクチン接種施行後は移動制限が解除されていく予定であるため、大動物実験の施行可能性について検討していく。それまでは代替の細胞ソースを購入して実験を遂行する。
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