最終年度は昨年度までに製造した積層シートの解析を施行した。病理組織学的に上皮細胞シートと間葉系細胞シートの接着を確認した。両シートの培養条件(播種細胞数、培養日数)を変化させ、計14枚の積層シートを製造したが、6枚で積層化成功を確認できた。平均接着面積は19.5mm*2であった。以上より最適な製造条件を決定した。製造中の培養液の解析では、積層前培養中の両シートおよび積層後の培養液中の成長因子、抗炎症因子をELISA法により測定したが、いずれの検体間においても有意な増減は認められなかった。当初は食道表本研究において製造可能であった積層シートが狭小であったため、より小さい細胞シートで粘膜再生効果が期待できる咽頭領域への移植をすることとした。咽頭表在癌に対する咽頭ESD後の瘢痕形成の抑制効果を期待して、ミニブタの咽頭粘膜欠損部に対する積層シート移植を計画した。ミニブタの下咽頭粘膜をESDで切除し、コントロールとして、非移植群および上皮細胞シート移植群を作成した。粘膜切除後2週間後および3週間後に組織を摘出し、得られた検体から線維化因子、成長因子、抗炎症因子についてRT-PCRを用いて測定した結果、上皮細胞シート移植群においていずれの因子も有意に低値であった。移植群では2週間後より3週間後において低下傾向であったが、非移植群では2週間後より3週間後で増加傾向であり、上皮細胞シート移植は粘膜切除後の炎症反応を早期に抑制することで、線維化を抑制し再上皮化を促進しているものと考えられた。このデータを対象として積層化シートの上乗せ効果を測定していく。 研究期間全体としては、当初の計画通り、上皮細胞シートと脂肪由来細胞シートを積層することで積層化シートの製造に初めて成功し、製造条件を決定した。予定より積層部分が狭小であったため、小さい細胞シートで効果が期待できる咽頭領域への展開が期待できた。
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