研究課題/領域番号 |
20K17057
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
須藤 豪太 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60830130)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸がん / 微小環境 / 腫瘍関連好中球 / 腫瘍関連マクロファージ |
研究実績の概要 |
大腸がん細胞株を用いたin vitroの解析では、遺伝子Xの高発現により大腸がん細胞の増殖に影響は与えなかったが、大腸がん細胞の遊走、浸潤が促進された。次に、大腸がん細胞株と好中球の共培養実験を行ったが、大腸がん細胞の遺伝子Xの発現は変化しなかった。一方、大腸がん細胞とマクロファージの共培養実験では、遺伝子Xの発現が亢進した。大腸がん細胞と共培養したマクロファージは、共培養する大腸がん細胞株の種類によりM2マクロファージまたはM1/M2マクロファージに誘導され、M1マクロファージ由来のIL-1βによって遺伝子Xの発現を誘導することが示唆された。M1マクロファージによって促進される大腸がん細胞の遊走および浸潤は、IL-1βの阻害により抑制された。T1大腸がん臨床検体を用いたマクロファージの免疫組織染色では、遺伝子X陽性例の浸潤先進部でM1マクロファージが多く分布しており、in vitroの実験結果に一致する結果であった。さらに、大腸がん細胞で産生されたXが、マクロファージのMMP-9発現を誘導することをIn vitro実験および臨床検体を用いた免疫組織染色で確認した。これらの結果から、浸潤先進部のマクロファージがIL-1βシグナルを介して大腸がん細胞の遺伝子Xの発現を誘導し、早期大腸がんの遊走および浸潤を促進させるメカニズムが明らかとなってきた。 当初は遺伝子Xの発現が腫瘍関連好中球によって誘導されるメカニズムを考えていたが、上述の通り直接的な関連は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
In vitroでの共培養実験の結果から、大腸がん細胞の遺伝子Xの発現はマクロファージにより誘導されることが明らかとなり、今年度はマクロファージに関する解析を進めた。その結果、遺伝子Xの発現が早期大腸がんの遊走および浸潤を促進させるメカニズムが明らかとなってきたが、浸潤先進部の腫瘍関連好中球の役割については現時点で明らかとなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍関連好中球(TAN)が大腸がん細胞の増殖、遊走、浸潤に与える影響を評価する。また、大腸がん細胞株とTANをヌードマウスへ共移植し、in vivo腫瘍形成能および浸潤・転移能を評価する。xenograftから切片を作成し、SAA1発現、好中球集簇、ケモカインシグナル関連タンパク、浸潤関連タンパク、上皮間葉転換マーカーなどの発現を評価する。 TANががん細胞に作用するメカニズムの解析として、好中球からTANに誘導する前後の遺伝子発現プロファイルを、RNA-seqあるいはマイクロアレイにより解析し、サイトカインおよび受容体の遺伝子発現を比較する。 遺伝子Xおよび好中球集簇、および上記で同定した関連因子のバイオマーカーとしての有用性を多施設研究によって検証する。大腸SMがん、特に内視鏡治療後に追加外科切除した症例を中心に解析を行い、早期がんの治療法選択マーカー(内視鏡的切除あるいは外科的 切除)としての有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染の拡大のため、研究が制限された期間があり、学術集会の多くがオンラインまたはハイブリッドであったことから、物品費、旅費が当初の予定よりも少なく、次年度使用額が生じた。次年度は物品費、旅費、論文掲載料などに使用する予定である。
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