大腸がんにおけるSAA1の機能を解析するため、解析を行った。SAA1を高発現する大腸がん細胞株(SW480)ではSAA1ノックダウンにより遊走・浸潤能が抑制された。一方、SAA1の発現が比較的低い細胞(HCT116)ではSAA1過剰発現により遊走・浸潤が促進された。腫瘍微小環境において、大腸がん細胞のSAA1発現を誘導するメカニズムとしてマクロファージおよび好中球に着目した。THP-1細胞をPMA処理によってマクロファージ様細胞に分化させ、大腸がん細胞と共培養した。またdHL-60細胞をATRAで好中球様細胞に分化させ、大腸がん細胞と共培養した。その結果、マクロファージが大腸がん細胞のSAA1発現を誘導することを見出した。また大腸がん細胞との共培養によりマクロファージのIL-1β発現が誘導されること、IL-1βに対する中和抗体により大腸がん細胞のSAA1発現誘導が抑制されたことから、マクロファージ由来のIL-1βがSAA1発現を誘導することが示された。さらに大腸がん臨床検体の免疫染色から、SAA1陽性浸潤先進部では、CD80陽性マクロファージと好中球の集積が認められた。SAA1高発現と浸潤との相関をさらに明らかにすべく、大腸がん細胞がマクロファージの遺伝子発現に与える影響に着目し、共培養モデルを用いて解析した結果、大腸がん由来のSAA1がマクロファージおよび好中球のIL-8ならびにMMP9発現を誘導することを明らかにした。大腸がん臨床検体を用いた免疫染色の結果、SAA1陽性の浸潤先進部では、マクロファージと好中球のMMP9を発現することが確認されたことから、大腸がんとマクロファージ・好中球のSAA1を介した相互作用が、浸潤を促進するというメカニズムが示唆された。
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