研究課題/領域番号 |
20K17063
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中寺 英介 順天堂大学, 医学部, 助教 (20596225)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NKT細胞 / ジェントロジー / 非アルコール性脂肪肝炎 / 炎症性サイトカイン / 高脂肪高コレステロール食 / 自然免疫 / 炎症 / 肝線維化 |
研究実績の概要 |
本研究では加齢によるNKT細胞を軸とした自然免疫制御の変化が脂肪性肝疾患の病態の変化にどのように関与するかを明らかにすることを目的としている。Ⅰ型NKT細胞を欠損するマウス(Vα14KO)およびⅠ型Ⅱ型のどちらも欠損するマウス(CD1dKO)を用い、それぞれ若年(12週齢)と高齢(55週齢)まで飼育したものに高脂肪・高コレステロール食(HFHC)を8週間摂餌させて実験に供し、加齢による非アルコール性脂肪肝炎の病態増悪におけるNKT細胞の役割を解析した。昨年度の時点で加齢マウスでは若年マウスよりも高度の脂肪肝炎を呈したが、VαKOマウスでは軽度の脂肪肝炎の軽減を示し、CD1dKOマウスではさらに脂肪肝炎の改善したことを示した。今年度の検討により、肝組織中のToll-like receptor (TLR) 4およびTNFα,IL-1β mRNAの発現がHFHCにより若年野生型マウスより加齢野生型マウスで有意に発現亢進し,加齢VαKOマウスおよび加齢CD1dKOマウスでは加齢野生型マウスと比較して有意に発現が低下したが,VαKOマウスとCD1dKOマウスの間には有意差が見られなかった.一方,肝組織中のC-C motif chemokine 2 (CCL2)およびchemokine (C-X-C motif) ligand 2 (CXCL2)のmRNAレベルはHFHCによって野生型加齢マウスで発現が有意に亢進したのに対して加齢VαKOマウスでは野生型と差がなく,加齢CD1dKOマウスにおいて有意に発現が減少した。以上の事象より、加齢マウスにおける脂肪肝炎の増悪においてTLR4-TNFα,IL1βを介した経路にはType I NKT細胞,CCL2およびCXCL2といったケモカインを介した経路にはType II NKT細胞が主たる役割を果たすと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である、高齢者の脂肪肝炎増悪におけるNKT細胞を軸とした自然免疫制御の変化の関与の解明というテーマに対して、現時点でVα14KO、CD1dKOの2種類のノックアウトマウスを用いた実験によって、Type I NKT細胞とType II NKT細胞が異なる経路で脂肪肝炎の増悪に寄与していることが明確に示され、Type I NKT細胞とType II NKT細胞のサイトカイン制御への関与についても相違が示されたため、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
NKT細胞の活性化を軸とした脂肪肝炎の病態への関与を考慮する上で、肝における免疫制御のみならず、腸管細菌叢への影響、腸管由来の病原体関連分子パターン(PAMPs)への影響を解析し、加齢による脂肪肝炎増悪機序への腸肝連関の関与を明らかにする。その上で、国際学会へ最終的なデータの報告を行い、英文誌へ投稿して研究成果を世界に公表していく方針である。
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