研究課題/領域番号 |
20K17064
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
柿崎 正敏 東海大学, 医学部, 助教 (00778954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HBV / cccDNA / エピジェネティック制御 / non-coding RNA / 反復配列 |
研究実績の概要 |
本研究では、cccDNAに相互作用する宿主由来non-coding RNA (ncRNA) に含まれる反復配列がエピジェネティック制御を介してpgRNA転写を抑制するメカニズム解明を目的としている。これまでの研究で、反復配列がヒストンH3K27における脱アセチル化・メチル化を促進することを明らかにしている。近年、cccDNAからウイルスRNAの転写が起こっている状態では、転写促進に働くH3K4のトリメチル化、H3K27とH3K122のアセチル化が進み、転写抑制に働く、H3K9とH3K27のトリメチル化はほぼ起こらないことが報告されている [Tropberger P, et al. Proc Natl Acd Sci U S A. 2015]。そこで、反復配列がヒストンH3K27以外の箇所における脱アセチル化とメチル化を促進するかを、ChIP法を用いて検証した。その結果、反復配列はcccDNAにおけるH3K9のトリメチル化を促進することが示された。また、ヒストンのアセチル化・メチル化に加え、DNAのメチル化がRNA転写制御に重要である。cccDNA上にはDNAのメチル化が起きやすいCpGアイランドが3箇所存在することが知られており、近年、このCpGアイランドのメチル化もウイルスRNAの転写制御に重要であることが報告されている [Zhang Y, et al. PLoS One. 2014]。そこで、反復配列がDNAのメチル化に関与しているかをバイサルファイトシークエンス法を用いて解析した。その結果、反復配列はDNAのメチル化には関与しないことが示された。以上の結果から、反復配列によるpgRNA転写制御は、ヒストンH3K9・H3K27のメチル化によって生じることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、HBV minicircle DNAを用いて実験を行ってきたが、この実験系がうまく機能しなくなってしまった。そのため、HBVの受容体であるsodium taurocholate cotransporting polypeptide (NTCP) をHepG2に過剰発現させた、HepG2-NTCPにHBVを感染させる系を用いて本研究を遂行させることとなった。この新しい系を立ち上げるために、時間がかかってしまったため、計画よりも進捗がやや遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の3点を検討する予定である (1) 反復配列と相互作用しpgRNA転写抑制に関与するタンパク質の同定:反復配列を含むビオチン化RNAプローブ(反復配列に変異を入れたものをコントロールとして用いる)をHBV複製細胞の核の溶解液と混合させ反復配列-タンパク質複合体を回収する。その後、オービトラップLC-MS解析を用いて、反復配列と相互作用するタンパク質を網羅的に同定する。同定したタンパク質のmRNAに対するsiRNAを用いて、pgRNA転写抑制に関与するタンパク質をスクリーニングする。 (2) ncRNA-タンパク質複合体の詳細な検索:(1)より、同定されたタンパク質とncRNAが複合体を形成することは証明されるが、その他のタンパク質も複合体に含まれていることが考えられる。そこで、IP法を用いて同定されたタンパク質を回収し、そのタンパク質と複合体を形成しているタンパク質をLC-MSを用いて同定する。 (3) 再現性・一般性の検証:得られた結果の再現性を、より自然の感染系に類似した、初代ヒト肝細胞での感染系を用いて確認する。
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