研究課題
2022年4月までに計10例の消化管神経内分泌癌の患者から未治療状態における癌部および非癌部の生検組織を採取した。また、胃癌生検検体を用いて高感度プロテオゲノミクス解析基盤についても取り組み、論文を発表した(Sci Rep. 2022 Mar 25;12(1):4419.doi: 10.1038/s41598-022-08430-7)。概要は以下の通りである。本検討では、トラスツズマブ+化学療法の投与を受けるStage IVのHER2陽性胃癌患者4人から治療前・2か月後の2ポイントで内視鏡生検検体(癌部、非癌部)を採取した。また比較対象としてStage IVのHER2陰性胃癌患者4人から1ポイントで内視鏡生検検体(癌部、非癌部)を採取した。上記検体の前処理を行い、質量分析計によるリン酸化プロテオーム解析を実施した。各種バイオインフォマティクス解析手法を用いて群間比較または個別比較を行った。HER2ステータスと薬物療法によって分子学的変動が認められた。治療前のHER2陽性胃癌と比較して、治療後では、ErbBシグナルが抑制的な傾向が示された。個々の患者における治療前後のリン酸化プロテオームのプロファイルは、HER2標的薬を含む薬物療法の効果予測因子や耐性因子の探索に有用な可能性が示唆された。治療前後のHER2陽性胃癌のリン酸化プロファイルを用いて治療後のキナーゼ活性を患者別に比較すると、キナーゼ活性プロファイルは患者別の特異性が高かった。治療に不応性を示した患者の治療後の腫瘍組織において特異的に発現が亢進しているキナーゼの同定が可能であった。生検検体は経時的に採取することができるため、治療前の治療法選択だけではなく、治療中のリン酸化状態の変化を調べることで、患者毎に治療の効果判定を迅速に行うことや適切な併用薬の選択が可能になることが期待された。
3: やや遅れている
新規の消化管原発神経内分泌癌の紹介が少なかったため、解析症例数が減少する可能性がある。
収集した検体を用いて、プロテオゲノミクス解析に移行し、データ収集・解析に努める。
本研究では、検体解析を最終年度に行う予定である。次年度使用額は、検体解析費用に計上する。
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Scientific Reports
巻: 12(1) ページ: 4419
10.1038/s41598-022-08430-7.