研究課題/領域番号 |
20K17070
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
広藤 愛菜 旭川医科大学, 医学部, 客員助教 (70847516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心筋再生 / 細胞分裂 / ヒストン修飾 / エピジェネティクス / H3K9me3 |
研究実績の概要 |
哺乳動物では心筋細胞が十分な分裂能力を持っていないため、心臓の再生が起こらないと考えられている。我々は、心筋細胞の分裂を抑制するメカニズムに、メチル化ヒストン修飾H3K9me3が関与することを以前に発見した。本研究では、H3K9me3が心筋細胞の分裂を制御するメカニズムを解明し、H3K9me3を標的として心筋を再生することができるかどうかを明らかにする。H3K9me3はヒストン脱メチル化酵素のKDM4Dにより消去できるため、心筋細胞特異的にKDM4Dを発現する遺伝子改変マウス(cKDM4Dマウス)および、KDM4Dを発現するアデノ随伴ベクター(AAV-KDM4D)を用いて実験を行う。 これまでに、発生の初期段階からKdm4dを発現しH3K9me3を消去した心筋細胞では、6週齢以降においても、細胞周期遺伝子の発現が維持されていることを明らかにした。この心筋細胞を用いて網羅的なトランスクリプトーム解析を行い、H3K9me3を消去した心筋細胞では非遺伝子領域の繰り返し配列で、特にLong Terminal Repeat(LTR)配列の転写発現が活性化しており、その下流の遺伝子発現に影響しているといデータを得ている。今後、H3K9me3の消去によって活性化したLTRが、心筋細胞の細胞周期遺伝子の発現維持に関与しているかどうか検討を進める。 AAV-KDM4Dを用いて成熟した心筋細胞でH3K9me3の消去を誘導したところ、一部のLTRの活性化は認められたが明らかな細胞分裂活性は得られなかった。この結果から、H3K9me3に介在させる細胞周期制御は、成熟した心筋細胞においては不可逆的である可能性が示唆され、今後は発生初期の心筋細胞と成熟した心筋細胞でH3K9me3消去の影響が異なるメカニズムを検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮説とは異なる結果が得られたが新たな知見も明らかとなり、目的である心筋細胞の分裂制御メカニズムの解明に向かい研究は進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
発生初期段階の心筋細胞と成熟後した心筋細胞で、H3K9me3の消去が細胞分裂活性に与える影響の違いを、トランスクリプトーム解析とオープンクロマチン解析から明らかにしていく。
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