研究課題/領域番号 |
20K17073
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉田 純一 東京大学, 医学部附属病院, 病院診療医(出向) (70755694)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経伝達物質 / Gタンパク質共役受容体 / 下神経節 / 後根神経節 / 感覚神経 |
研究実績の概要 |
心不全の病態は、心臓が原因で循環動態に異常を来すことで全身の様々な臓器に影響が及ぶ。 心臓は脳からの制御を受けており、心臓から脳へシグナルが伝達され、中枢で様々な全身からのシグナルと合わさり情報処理が行われ、脳から心臓へとシグナルが返されていると考えられている。前年度の研究では、主に心不全時に脳中枢で起こる変化に焦点を当て、解析を行った。本年度は、そのような変化を引き起こす神経を介したシグナル伝達経路に注目した。 心不全患者では交感神経活性が亢進しており、副交感神経の活性を上げる事が予後の改善につながると考えられている。そのため心不全患者に対する迷走神経刺激による治療が長年試みられているが、残念ながら予後の改善に至っていない。その原因として現在の技術では神経を束としてしか刺激することができないということが考えられる。心不全を改善することのできる神経細胞を同定し、その神経細胞の活動を特異的に制御することで、心不全改善につながるかを検討することとした。 心臓へのストレスは迷走神経下神経節及び脊髄後根神経節からの求心性神経を介して脳へ伝達される。心不全の病態でどのように神経が心臓へのストレスを受容しているかを調べるために、マウスの心不全モデルにおいて下神経節及び後根神経節の遺伝子発現解析を行ったところ、下神経節及び胸部、腰部レベルの後根神経節において有意な遺伝子発現の変動が認められた。特に胸部レベルでの後根神経節において遺伝子発現変動が大きく、心臓へのストレスを主に感知している部位と考えられた。次に、特定の神経の機能を制御するため、その標的となる神経伝達物質及びGタンパク質共役受容体を検討することとした。その結果、遺伝子発現変化の大きい神経伝達物質及びGタンパク質共役受容体を複数同定した。今後、それぞれの標的に介入することで、心不全病態の改善につながるか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心不全の病態において、心臓のストレスを感知して起こる神経節の遺伝子発現変動を捉え、また、脳内で起こる変化を網羅的に解析した。今後の新たな心不全治療開発の基礎となる知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で得た知見を心不全治療に応用するため、一細胞単位での神経機能制御を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、実験に使用するマウスの繁殖の計画に遅れが出たため、次年度に実験を行う予定とした。
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