研究課題/領域番号 |
20K17076
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古澤 健司 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50829158)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / 潜在的 / 心筋障害 / 心エコー / ストレイン / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬は従来の抗がん薬とは異なる機序により画期的な治療効果を示しているが、全身の様々な臓器に重篤な副作用を引き起こすことが報告されている。生命予後に大きく影響するものとして、心筋障害(irCAE)が挙げられるがその発症時期や頻度、詳細なメカニズムに関して不明な点が多い。本研究は、バイオマーカーと心エコーによる2Dスペックルトラッキング法によるglobal longitudinal strain (GLS)及び3D心エコーによる収縮能評価を用いることで、心不全発症や劇症化する前段階で、潜在的なirCAEの同定とその関連因子を明らかにすることを目的とした。 まず準備段階として後ろ向きに免疫チェックポイント阻害薬治療による心血管系有害事象を解析し、報告した。ここ5年で409名の患者に免疫チェックポイント阻害薬治療が実施されており、重篤な心血管イベントの発生は2名(0.5%)であり、心筋炎、心筋血管炎の発生であった。 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療における心筋障害(irCAE)を予測するために、既存のバイオマーカトロポニンT、NT-ProBNPでフォローし、生理検査としては心電図、心エコーでフォローした。心エコーによりirCAE心機能障害を評価するために、左室長軸方向の変形を評価するglobal longitudinal strain(GLS)で左室収縮能とともに潜在的な左室収縮障害を評価した。 現在まで80例が免疫チェックポイント治療をうけているが、当初の予定とことなり、顕在的な心筋障害の発症なく、潜在的にトロポニン上昇するケース以外に投与前からトロポニン、NT-ProBNPが上昇しているケースがあった。いずれも心筋障害はsubclinicalなものであった。今後、subclnicalな状況とirCAEとの関連性を検討し解析をすすめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ここまでに、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療における心筋障害(irCAE)を予測するために、既存のバイオマーカトロポニンT、NT-ProBNPでフォローし、生理検査としては心電図、心エコーでフォローした。心エコーによりirCAE心機能障害を評価するために、左室長軸方向の変形を評価するglobal longitudinal strain(GLS)で左室収 縮能とともに潜在的な左室収縮障害を評価した。 現在まで80例が免疫チェックポイント阻害薬治療をうけていたが当初の予定より、目標より症例が少ないこと、またirCAEの発症頻度が少ないことから目標症例、心筋障害に関する生検や新たなバイオマーカー探索が行えていない現状があり、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、施設内で実施されている免疫チェックポイント阻害薬治療開始から、バイオマーカトロポニンT、NT-ProBNP、生理検査で心電図、心エコーフォローを実施する。顕在的な心筋障害の発生が少ないことから、当初の研究計画にくわえて、治療開始後だけでなく、治療前段階からの潜在的なバイオマーカー異常、心エコー異常がある患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬治療がどのような影響を与えていくのかも検討項目にくわえていく準備もすすめている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は臨床で行っている検査結果も利用している。また、心筋障害が顕在化したケースでは、新たなバイオマーカー探索を行う研究に要する資材などに費用がかかる予定であったが、症例数が少なく当初より資金を要しなかった。またコロナウイルス流行により海外渡航禁止、国内の主要学会もリモート開催となったため、資金を当初よりおさえる形となった。 一方、次年度はPC・解析ソフトの購入を予定しており、購入したPCを使用し腫瘍循環器に関するデータを集積して解析する予定である。また海外での学会発表や論文化を予定している。 以上より引き続き、研究資金が必要であり繰り越した。
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