研究課題/領域番号 |
20K17076
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古澤 健司 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50829158)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / 心筋障害 / 心エコー / ストレイン / 心臓バイオマーカー |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は従来とは異なる機序により画期的な治療効果を示しているが、全身の様々な臓器に重篤な副作用(irAE)を引き起こすことが報告されている。生命予後に大きく影響するものとして心筋炎を含む心筋障害(irCAE)が挙げられるがその発症時期や頻度、詳細なメカニズムに関して不明な点が多い。本研究は、バイオマーカーと心エコー所見から、心不全発症や劇症化する前段階で、潜在的なirCAEの同定とその関連因子を明らかにすることを目的としている。ICI治療におけるirCAEを予測するために、ベースライン、投与後6週後、12週後にバイオマーカー(トロポニンT、NT-ProBNP)でフォローし、心電図、心エコーを実施した。心エコーでは、一般的指標に加え左室長軸方向の変形を評価するglobal longitudinal strain(GLS)で潜在的な左室収縮障害を評価項目にした。 ICI治療をうけており、458例を解析対象患者とした。原疾患である癌の治療状態が悪く、1回投与で中止されたり、途中で無効とは判断され、ICI治療断念され緩和治療となるケースも多く認めた。当初の予定より心筋炎のような重篤なirCAEの発症は認めなかった。心不全発症も認めたが併用化学療法の影響が考えられた。心筋障害はバイオマーカー異常のみでsubclinicalなものが主体であった。ICI投与前からバイオマーカー上昇しているケースがあった。ICI治療前段階での心疾患の有無(顕在的な異常)や潜在的な異常がその後のirCAE発症にどのような影響を与えるかについて検討項目に加えている。またGLSと血圧より計測されるMyocardial Work Indexを検討項目に加え、irCAE発症との関連について調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫チェックポイント阻害薬治療における心筋障害を予測するために、既存のバイオマーカーであるトロポニンT、NT-ProBNPでフォローし、生理検査としては心 電図、心エコーでフォローした。心エコーにより心機能障害を評価するために、左室長軸方向の変形を評価するglobal longitudinal strain(GLS)で従来の左室収縮能とともに潜在的な左室収縮障害を評価してきた。 状態の悪く、途中でICI治療断念され緩和治療となるケースや、画像が不明瞭なためGLS解析不能なケースも認めた。当初の予定より心筋炎のような重篤な心筋障害の発症頻度が少ないことから、心筋生検は実施できず新規バイオマーカーの探索についての計画は中止した。顕在的な心筋障害の予測関連因子やバイオマーカー探索が行えていない現状があり、研究期間の延長を申請していることから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
登録した症例の解析を進め、既存の心臓バイオマーカー、心エコー(LVEF, GLS)とイベント発生の関連を検討する。既存の報告より本研究でのイベント発生が低い原因を探索する。 登録された症例で、画像解析な可能なものはGLS解析を実施し、血圧の指標も加えて得られる、Myocardial Work Indexを新たに検討項目に追加した。 ICI投与中に実施すべき検査、評価項目を検討し、心臓irAEの適切なフォロー、管理方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫関連心臓関連イベントとして心筋炎の発生を認めず、新規バイオマーカー探索を行うために予定していた研究費に未使用額が生じた。 当初計画のバイオマーカー主体の解析から変更し、画像解析を円滑に進めるために、画像解析装置、ソフトを追加購入することで、より詳細に研究課題を解明することが可能である。
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