研究課題/領域番号 |
20K17081
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
長尾 学 神戸大学, 医学研究科, 助教 (70866029)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病性心筋症 / グルタミン代謝 / 心臓リモデリング / 心不全 / グルタミノリシス |
研究実績の概要 |
1) 糖尿病性心筋症におけるグルタミノリシスの制御機構の解明 インスリン抵抗性を有する心臓におけるグルタミン代謝を評価するにあたり、グルタミンをグルタミン酸へ変換する酵素であるグルタミナーゼに注目した。グルタミナーゼの発現・酵素活性については2型糖尿病モデル動物として用いているAdipo-PDK1 KOマウスと野生型の間に有意な差は無かった。また、実際のグルタミン代謝を評価するため、安定同位体ラベルされたグルタミンをマウスに投与し、心臓組織におけるグルタミン由来の代謝物の定量を行った(stable isotope tracing)。外因性に投与されたグルタミンは心臓組織中のグルタミン総量の10%にも満たないという結果であり、KO群の心臓組織におけるグルタミン、グルタミン酸の増加のメカニズムは解明できていない。一方、Adipo-PDK1KOマウスに離乳後より6週間、グルタミナーゼ阻害薬(BPTES)を腹腔内投与したところ、統計上の有意差は認めないものの、心重量/脛骨長比はBPTES投与群で低下する傾向を示した。糖尿病性心筋症における心肥大にグルタミン代謝が何らかの影響を及ぼすことを示唆する結果であると考えられ、さらなる研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はマウスを用いた基礎研究に重点を置いた。ほぼ予定通りに実験は進んだものの、糖尿病モデル動物の心臓組織で上昇していたグルタミンやその代謝物の由来を突き止めることは現段階ではできていない。ヒト検体の測定が予定通りに進んでいないため、次年度の課題とした。
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今後の研究の推進方策 |
1) 糖尿病性心筋症におけるグルタミノリシスの制御機構の解明 Adipo-PDK1 KOマウスを用いたstable isotope tracingではグルタミン代謝を十分に評価できなかったため、初代培養ラット心筋を用いてin vitroの実験系でグルタミン代謝を評価する。 2) ヒト血液検試料を用いた糖尿病性心筋症のバイオマーカーの探索; 2型糖尿病患者では左室拡張能の障害から、心不全を来しやすいことが知られている。2型糖尿病患者の心機能を心エコー図検査法を用いて評価し、グルタミンを中心としたアミノ酸やその代謝物との相関を検証する。左室収縮能は左室駆出率(EF)、左室拡張能の指標はE/e’、E/A、左房容積係数、左室心筋重量係数とし、アミノ酸・アミノ酸代謝物は液体クロマトグラフィー質量分析計によって測定する。対象は我々の施設にて入院加療を行った心血管病の患者とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入額が予定より低予算でおさえられたため、次年度使用額が生じた。翌年度に持ち越して使用する予定である。
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