研究課題
Adipo-PDK1KOマウスは心臓における遺伝子改変を行うことなく、強いインスリン抵抗性と心肥大を呈することや、長期間に及ぶ食餌介入が不要なことから、糖尿病性心筋症のモデル動物として非常に有用である。心臓組織のメタボローム解析ではグルタミンやグルタミン酸をはじめとした種々のアミノ酸が上昇していた。また、同マウスへグルタミンの安定同位体を投与することで心臓組織における実際の代謝物の流れ(flux)を評価したところ、予想に反し、外因性に投与したグルタミンの取り込みは野生型とノックアウト群で差は認めず、心臓組織中の90%以上は内因性のグルタミンであった。In vivoによる同実験のlimitationであり、インスリン抵抗性下の心筋におけるグルタミン利用については正確に評価できなかった。一方、糖尿病を有しない個体における心臓リモデリングとグルタミノリシスの関連を調査するため、野生型マウスへアンギオテンシンを持続投与する心肥大モデルを作成したところ、心臓組織におけるグルタミノリシスは亢進していた。興味深いことに、律速酵素であるGLS1(グルタミナーゼ1)の阻害は心臓の線維化と肥大を抑制した。しかしながら、Adipo-PDK1KOマウスについては、離乳後より6週間のGLS1阻害薬の投与を行ったが、グルタミノリシスの阻害は心重量に影響を与えなかった。以上の結果から糖尿病性心筋症における心臓リモデリング・代謝リモデリングの分子機構において、グルタミノリシスの関与は低いと結論づけた。
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American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology
巻: 322 ページ: H749~H761
10.1152/ajpheart.00692.2021