研究課題
近年,高齢化やがん治療の進歩に伴いがん生存者が増加する一方で,がん疾患自体やがん治療が循環器疾患の生命予後を悪化させると報告されている.実臨床の情報が他領域に比べると乏しく,研究の多くは欧米で行われており, がんの種類や頻度が欧米と異なる本邦でも適応できるか明らかでない.本研究の目的は,本邦におけるがんと循環器疾患との関連性について解析し,入院中死亡や入院期間,心血管イベントの増加に影響を与えているかを調査することである.初年度は主にデータの解析を行った.国立循環器病研究センターに訪問し,日本循環器学会の全国データベースであるJROAD-DPCのレジストリデータが入ったハードディスクを受け取った.施設内に施錠可能な解析室を増築し,ハードディスクや解析用パソコンを施錠管理し,入退室者の管理も行った.JROAD-DPCはビッグデータであり,大容量のデータを解析するため,解析ソフトのJMP,SASを購入した.研究代表者はレジストリデータから,がんの既往と,心筋梗塞や静脈血栓塞栓症などの心血管疾患の予後との関連を解析した.がんと静脈血栓塞栓症の論文はJournal of the American Heart Association,がんと急性心筋梗塞の論文はOpen Heartに投稿し,acceptされた.また,同様のビッグデータを用いて,心不全の死亡率とビタミンD製剤についての論文,心不全の死亡率と施設心エコー件数についての論文,静脈血栓塞栓症の死亡率と抗凝固薬の種類についての論文を投稿し,accpetされた.これらの研究内容について,日本循環器学会学術集会のシンポジウムで2年連続発表し,国際学会でも2回発表した.最終年度には心不全の死亡率と心保護薬の種類に関する論文がacceptされた.研究機関全体を通じて合計6本の論文を投稿した.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
The Journal of Medical Investigation
巻: 70 ページ: 41-53