研究課題
心臓外科手術の進歩により以前は救命できなかった先天性心疾患患者の多くが成人期まで到達できるようになった。しかし、多くの場合は「根治」したわけではなく、術後の合併症・遺残症・続発症を伴うことが少なくない。本研究では、チアノーゼ性先天性心疾患の中で最多であるFallot四徴症の修復術後遠隔期の突然死予防の治療戦略を明確化することを目的としている。Fallot四徴症修復術後遠隔期の患者からカテーテルを用いて右室心筋を採取し病理学的に評価を行った。ヘマトキシリン・エオジン染色法を用いて行った右室心筋サイズの評価では、右室心筋は中等度肥大していた。マッソン・トリクローム染色法を用いて行った右室心筋の線維化評価では、中等度-高度の右室心筋の線維化を検出した。この右室心筋の線維化はFallot四徴症修復術後の突然死と関係があると既に報告されている。右室心筋の線維化を検出できる非侵襲的画像評価はないか探索を行った。心臓MRI検査での右室容積評価においては、右室拡張末期容積係数・右室収縮末期容積係数いずれも右室心筋の線維化率と有意な相関関係を認めなかった(各々R=-0.24, R=-0.24 )。また心臓MRI検査での遅延造影像はいずれも右室流出路に認められ線維化の寡多とは関係を認めなかった。遅延造影C T検査で測定した細胞外容積分画や心臓M R I検査でのT1マッピングから測定した細胞外容積分画が右室心筋線維化と相関がある可能性が示唆された。Fallot四徴症修復術後遠隔期の右室心筋の線維化は肺動脈弁閉鎖不全症に起因すると報告されている。本研究においてはいずれの症例も中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全症を呈していたが、肺動脈弁閉鎖不全症の重症度と右室心筋線維化率に相関関係は示されなかった(R=-0.39)。
3: やや遅れている
2020年度の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、Fallot四徴症修復術後の遠隔期の評価目的の検査入院の件数が減少したたため、症例数を十分に得られなかったから。
右室心筋線維化について、カテーテルによる心筋生検を用いた病理学的評価以外の評価方法を探索する。具体的には、遅延造影CT検査によって測定された細胞外容積分画や心臓MRI検査でのT1マッピングによって測定された細胞外容積分画との相関を明らかにしたい。Fallot四徴症修復術後の突然死リスクである右室心筋線維化を、上述の非侵襲的モダリティで評価し、心臓MRIでの右室容積のみでは評価が不十分であることを提唱したい。
2020年度は新型コロナウイルス感染症のため参加予定であった学会の中止及びオンライン開催への変更が相次いだため旅費が予定を大幅に下回った。また、新型コロナウイルス感染症のため予定していた検査入院も延期が相次いだため症例数も予定を大幅に下回ったたため、解析ソフトの使用を延長する必要が出てきた。2021年度には予定症例数を達成し、統計学的な解析を進めていきたい。
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