研究実績の概要 |
本研究は、末梢動脈疾患(PAD)におけるPCSK9阻害薬を用いた積極的脂質低下療法が下肢血管のプラーク退縮・安定化に与える効果を、脂質に富む不安定プラークの検出に優れている近赤外線分光法(Nearinfrared spectroscopy-intravascular ultrasound:NIRS-IVUS)を用いて検討し明らかにすることを目的とした。Fontaine分類II度以下で、患側治療部位と同側肢(腸骨動脈領域又は浅大腿膝窩動脈領域)に動脈硬化性病変が残存するPAD症例(20歳以上~90歳以下で性別は問わない)を対象とした。まず正式な研究を開始する前に安全性と有効性の評価を行うため、パイロット研究として、上記基準を満たす10例のPAD症例に対して、経皮的血管形成術施行時の治療前後にNIRS-IVUSでの評価を行った。経皮的血管形成術後からLDLコレステロール値70mg/dl未満を目標に従来の薬物治療(スタチン,エゼチミブ,PCSK-9阻害剤など)にて積極的脂質低下療法を施行した。積極的脂質低下療法を継続のうえ、下肢動脈エコーや足関節上腕血圧比(ABI)にて1,3,6,12ヵ月後と定期的に観察し、経皮的血管形成術後の開存率や残存病変の評価を施行した。当院は京都府の感染症指定病院としてコロナウィルス感染症の対応に従事する必要があり、通常の入院診療に著明な制限(手術制限・入院制限・患者制限)がでたため、本研究に多大な影響が生じたが、令和2年及び3年度を通じパイロット研究として10例の症例登録に成功した。経皮的血管形成術後に発生した重篤な有害事象(死亡,心血管有害事象,下肢切断など)は認めず、安全性に問題はなかった。有効性については現在追跡中の症例も多く、今後評価を行う予定である。
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