研究課題/領域番号 |
20K17091
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
柴田 敦 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (60722668)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コホート研究 / 心筋組織凍結保存 / 筋肉内脂肪割合 / 心臓周囲脂肪 |
研究実績の概要 |
本研究では、特定疾患の一つである拡張型心筋症の病態の解明を目指すべく、“環境要因・後天性要因によるmiRNAの発現の変化が、拡張型心筋症患者の心筋リモデリングやミトコンドリア異常に関与する” という仮説を立て拡張型心筋症患者の血液および心筋生検サンプル中のmiRNAの変化と組織所見、臨床アウトカムとの関連を解析することを計画した。 その中で、まず令和2年度の課題として、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備することを掲げた。そこで、現在大阪市立大学医学部附属病院循環器内科に心筋症が疑われ入院となった患者で虚血性心疾患を否定することが出来た患者を、前向きコホート研究に組み入れている。更に65歳未満では全例、65歳以上では可能な限り心筋生検を施行している。心筋生検を行った患者では、心筋生検時に診断に使用した組織の残余組織を凍結保存している。本コホート研究には2021年3月31日までに、174名の非虚血性心筋症患者を登録し、内93名で心筋組織の凍結を行っている。本コホート研究は心筋組織の解析の他、各種臨床検査データを包括的に取得・解析し、再入院や生命予後等との関連性を多目的に明らかにすることを含んでいる。このコホート研究から、大腿部の筋肉内脂肪割合と心不全イベントとの関連、心臓周囲脂肪と左室の逆リモデリングとの関連を見出し、学会報告するとともに論文の執筆(投稿準備中)を行った。この結果より、非虚血性心筋症の病態に異所性脂肪が関与している可能性を考慮し、異所性脂肪と心筋組織性状、異所性脂肪と血中アディポカインの関連を評価する準備を進めている。 また、血液・心筋生検サンプルを用いたmiRNA解析と組織所見との関連を検討すべく、心筋組織に対して、画像解析ソフトを用いて心筋細胞の長径と短径、心筋細胞面積、線維化面積の定量化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、令和2年度の課題として、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備することを掲げた。こちらに関しては、計画通り進めることが出来ており、本コホート研究から一定の成果も報告することが出来ている。 一方で、COVID-19の感染拡大を受け、緊急事態宣言が発令されたことから、所属機関内での研究活動が一時的に制限された影響もあり、血液・心筋生検サンプルを用いたmiRNA解析は当初の計画よりもやや遅れている。 また、当初、海外学会で発表を行うことで、海外の研究者と意見交換の場を得ることを考えていたが、海外渡航制限の影響により計画を実行することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績に報告した通り、非虚血性心筋症の病態に異所性脂肪が関与している可能性を考慮している。そこで、異所性脂肪と心筋組織性状、異所性脂肪と血中アディポカインの関連を評価していく。異所性脂肪と関連が認められた血中アディポカインに関しては、コホート研究を用い横断的な検討を行い、非虚血性心筋症患者のバイオマーカーと成り得るか評価していく。 また、当初の方針通り、引き続き、血液・心筋生検サンプルを用いたmiRNA解析と組織所見との関連の検討を進めていく。凍結保存した心筋組織からmiRNAの抽出を用い、抽出したmiRNAの発現プロファイルをmiRNA PCR arrayにて網羅的に検討し、拡張型心筋症患者群で有意に発現が変化したmiRNAをリストアップし、定量的リアルタイムPCRで確認する。これらmiRNA解析結果と心筋組織所見の関連を検討する。これらにより心筋におけるリモデリングおよびミトコンドリア異常の機序をmiRNAによる遺伝子発現制御の観点から解明する。更に、患者血清よりエクソソーム画分を抽出・精製し、エクソソームに含まれるmiRNAを、キットを用いて抽出する。このmiRNAの発現を、先の心筋組織から得られたmiRNAの結果と照らし合わせて検証することで、血中のmiRNAが拡張型心筋症患者の臨床的バイオマーカーとなりうるか検討する。 引き続いて血中・心筋組織中のmiRNAと臨床アウトカムの関連の検討を行う。血中および心筋組織中のmiRNA発現の変化のうち、組織病理所見と強く関連が認められたものと予後との関連について検討する。コホート研究を用い横断的な検討を行うことで、予後改善に結び付くmiRNAを見出すことが目的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、国際学会参加のためなどの旅費として計上していたものが、COVID-19の感染拡大を受け、海外渡航が困難となったことから使用しなかった。次年度も同様に旅費として計上しているものの内、大半を使用しないことが予想される。 こちらに関しては、次年度の血液・心筋生検サンプルを用いたmiRNA解析に多くの支出が予想されることから、そちらに充てる計画である。
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