研究課題/領域番号 |
20K17094
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
北里 梨紗 北里大学, 医学部, 助教 (10868938)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 機械的減負荷 / 培養心不全モデル / リバース・リモデリング |
研究実績の概要 |
末期重症心不全治療において、ventricular assist device(VAD)が担う責務は大きい。近年、VADはその強力な機械的減負荷によりreverse remodeling (RR)による心機能改善を齎し、BTR(bridge to recovery)としての役割も注目される。但し、実際にVAD離脱に至る症例は稀であり心移植へのbridge目的の導入が多くを占める。機械的減負荷下のRRの分子学的機序は不明であり、細胞の減負荷を可能にする3D培養システムを用いこれを明らかにしたいと考え研究に取り組んでいる。 現在は下記研究1を遂行し終えた。 【研究1 ラット心筋細胞心不全培養モデルの MUの効果検討】 予備実験として新生仔ラットの左室由来の初代培養系の心筋細胞を用い、Angiotensin II(Ang II)を負荷することにより心不全培養モデルを作成した。その後、培養心不全モデルで変化し得るBNP, ANP等の心肥大に関わる遺伝子発現をRTPCRで確認し、免疫組織学的に心筋細胞肥大を解析し、通常培養とRCCSで同時に培養、比較した。RCCSは、細胞培養チェンバーを回転させることで重力の影響を減少させた特殊な環境を作り出し、重力が細胞に与えるストレスを最小限に抑えることで、生体内に近い環境での3次元的な細胞培養を可能にし、骨細胞においてはin vitro MUモデルとしても使用されている (Spatz et al. JBC, 2015)。解析の結果、AngII 10-7M刺激においてANP, BNPは有意にRCCS 培養により低下し、また免疫染色にて細胞肥大も形態学的に有意に抑制されていることがわかった。
今後はより詳細な細胞シグナルの検討とともに心不全治療薬を添加した効果を解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はウイルス流行により納期の遅れ等あったが、現在予備実験は終了し、概ね予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はMU下培養心不全モデルにおけるより詳細な細胞シグナルの核心に迫っていき、心不全治療薬を投与した効果についても検討していく。 本研究は、VAD 装着後のBTRを期待できる患者の層別化、bridge to transplantation (BTT)からBTRへ転換を可能にするメカニズム発見に繋がる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に進んでいたため、RCCSに使用するベセルや試薬の追加購入等のため研究費の前倒し請求をさせていただいたが結果的には次年度以降の購入で間に合う予定である。今後はMU状態での培養心不全モデルの細胞シグナルの詳細により迫るため、免疫染色の抗体や炎症性サイトカインや線維化のマーカーのELISAキット等を購入予定である。
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