研究課題/領域番号 |
20K17101
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
山本 真衣 久留米大学, 付置研究所, ポスト・ドクトラルフェロー (90830026)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HFpEF / 左室拡張障害 / IL-22 / IL-22BP / STAT3活性化サイトカイン |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた我が国では高齢者心不全の爆発的な増加に直面している。中でも左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF;Heart failure with preserved ejection fraction)に関しては、予後改善につながる確固たる治療法は確立されておらず、その確立は急務である。 申請者は、HFpEFの病態の一つである左室拡張障害に着目した。Signal transducer and activator of transcription 3(STAT3)活性化サイトカインであるインターロイキン22(IL-22)は左室拡張障害を起こす可能性がある。本研究の目的は、左室拡張障害の病態におけるIL-22および、IL-22の強力な内因性阻害物質であるIL-22結合タンパク(IL-22BP)の役割を明らかにすることである。 まず、IL-22が拡張障害に影響を与えるかどうかを調べるために、WTマウスおよびIL-22KOマウスにAngiotensinⅡ (ATII)の持続投与による拡張障害モデルを作製した。WTマウスとIL-22KOマウスの両群ともにEFで示される収縮機能の低下は見られなかったが、WTマウスではE/e'が増加しており、拡張障害の進行が推測されたことに対して、IL-22KOマウスではE/e'の増加は見られず、AT2による拡張障害が抑制された。 次にIL-22が組織学的変化に影響を与えるかどうかを調べるために、心筋肥大および線維化を評価した。ATII負荷2週間では、WTとIL-22KOマウスに心筋肥大および線維化の差は見られなかったが、ATII負荷4週間ではWTマウスで血管周囲の線維化が亢進することに対して、IL-22KOマウスでは血管周囲の線維化亢進が抑制された。 IL-22はATII負荷による拡張障害および心臓組織中の血管周囲の線維化を起こす因子であると考えらえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
必要数の遺伝子改変マウス確保が困難であった結果、実験の進行に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1)ATⅡ負荷によるIL-22,IL-22受容体などIL-22関連分子発現の評価する。 2)IL-22BPKOマウスを用いて、IL-22KOマウスと同様の評価を行い、拡張障害におけるIL-22BPの役割を明らかにする。 3)心臓や血管における炎症および線維化関連分子発現、STAT3活性化など分子活性化を評価し、IL-22と拡張障害の発症メカニズムの関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行にやや遅れを生じているため。ATII持続投与による拡張障害モデルの作製や、ウエスタンブロット、及び免疫染色の抗体や試薬購入に使用する予定である。
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