超高齢社会を迎えた我が国では高齢者心不全の爆発的な増加に直面している。中でも左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF;Heart failure with preserved ejection fraction)に関しては、予後改善につながる確固たる治療法は確立されておらず、その確立は急務である。 申請者は、HFpEFの病態の一つである左室拡張障害に着目した。Signal transducer and activator of transcription 3(STAT3)活性化サイトカインであるインターロイキン22(IL-22)は左室拡張障害を起こす可能性がある。本研究の目的は、左室拡張障害の病態におけるIL-22および、IL-22の強力な内因性阻害物質であるIL-22結合タンパク(IL-22BP)の役割を明らかにすることである。 本年度は、Angiotensin II(AngII)負荷による左室拡張障害に与えるIL-22BPの影響を調べた。野生型(WT)マウスではAngII負荷2週間で心臓でのIL-22BP発現が増加した。しかし、IL-22BP欠損マウスへのAngII負荷では、血中IL-22濃度および心機能(EF、E/e’)にWTマウスとの差は見られなかった。 本研究を通して、AngII負荷により血中IL-22濃度が増加し、心臓でIL-22受容体(IL-22R1)およびIL-22BP発現が増加することがわかった。またIL-22欠損マウスではAngII負荷による心重量/体重比および心室壁肥厚の増加が抑制され、左室拡張能低下が抑制されたことから、IL-22が心肥大および左室拡張障害の増悪因子であると考えられる。一方でIL-22BPはAngII負荷による左室拡張障害に影響を与えないと考えられる。 以上の結果から、IL-22は左室拡張障害を制御するための重要な分子であると考えられる。
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