これまで心臓マクロファージの分化マーカーであるAregが脂肪酸によって未分化マクロファージで発現することを発見し、この脂肪酸によるAreg発現がGpr65を介していることを明らかにした。我々の予備的知見としてAregは心臓マクロファージから分泌され心保護的に作用することを明らかにしているが、Gpr65ノックアウトマウスについて心機能、心臓マクロファージの分化度について解析を行った。 Gpr65ノックアウトマウスの心臓マクロファージの分化度についてホールノックアウトマウスを 用いたフローサイトメトリー解析と、Gpr65ノックアウトマウスの骨髄細胞を用いた骨髄移植を行なった。 フローサイトメトリーではCcr2が発現しているマクロファージが増加し、単位心臓重量あたりのマクロファージ数がGpr65ノックアウトマウスで減少した。RNAシーケンスではGpr65ノックアウトマウスの心臓マクロファージではAreg発現が低下した。 Gpr65ノックアウトの骨髄移植を行なったマウスでは生存期間には影響はないが、野生型の骨髄を移植したマウスと比較すると2ヶ月程度の経過で心拡大を認め左室駆出率が低下した。 次にGpr65のリガンドが脂肪酸であるという仮説を立て、心筋細胞に多く発現しており細胞膜表面で不飽和脂肪酸を供給するPla2g5について解析を行った。具体的にはPla2g5のfloxマウスとα-MHC発現細胞でCreを発現するマウスを交配させ、真菌細胞のみでPla2g5をノックアウトさせた。このPla2g5コンディショナルノックアウトマウスではGpr65ノックアウト同様に2ヶ月程度の経過で心拡大と左室駆出率の低下を認めた。フローサイトメトリーでは単位重量あたりのCcr2陽性細胞が増加しており、心臓マクロファージの分化障害が認められた。
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