本研究はCD206ノックアウトマウスにおける心筋肥大・心機能障害の発症機序を解明し、有効な治療介入手段を開発することを目的とした。本年度では、6週齢から12週に亘り普通食を投与して飼育したCD206遺伝子を欠損させたCD206-/-(KO群)、CD206+/+(WT群)マウスにおいて、Azan染色法の評価では、WT群と比較してKO群マウスでの心筋線維化の亢進を観察した。さらに、Group1「KO&CD206+/-(Hetero)」群、Group2「KO&KO」群、Group3「Hetero&Hetero」群マウスを1ケージに1:1で10週齢から1ヶ月間のCohabitationを行い、14週齢よりParabiosis術を行った。18週齢に心臓を摘出し、qPCR法にてGroup1のKO群とHetero群マウス、Group2のKO群マウス、Group3のHetero群マウスの四群に分けて遺伝子発現レベルを検討した。全体を通して、Group2-KO群に比してGroup1-KO群では、マクロファージマーカーのF4/80とM2マクロファージマーカー のCD206発現の有意義な上昇が認められた。線維化遺伝子のCol1a1、Col3a1、Col4a1とTgfβ1、Tgfβ2、Tgfβ3とCtgf、Acta2発現の低下傾向が認められた。Group3-Hetero群に比してGroup2-KO群では、線維化遺伝子のTgfβ1とTgfβ2の有意義な上昇が認められたが、Group1-KO群では線維化遺伝子の有意差が認められなかった。今回我々はCD206KOマウスでは心筋線維化関連遺伝子の発現亢進を検証し、さらにParabiosis術によるCD206の移植がCD206KOマウスの線維化遺伝子の発現亢進を逆転させて弱まってゆくことを観察した。以上よりM2マクロファージは心筋症の表現型である心筋繊維化の亢進に対して保護的に作用することが示唆された。さらにCD206マクロファージの移植が心筋症の終末像 である心不全治療の有望な治療標的になりうることが強く示唆された。
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