研究課題/領域番号 |
20K17120
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
細川 和也 九州大学, 大学病院, 助教 (40746872)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 / 血栓塞栓症 / 機械学習 / 画像診断 / 肺高血圧 |
研究実績の概要 |
希少疾患である慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は適切な診断・治療により予後が劇的に改善する疾患である。そのため、スクリーニング検査である肺血流シンチグラムの診断精度が生死を分ける。現状では読影に習熟した専門医が限られており、約半数のCTEPHが未診断のままとなっている。本研究はCTEPHの標準的スクリーニング検査である肺血流シンチグラムを専門医と同水準の精度で判別する画像診断プログラムを確立することが目的である。画像診断プログラムの確立と並行して、web上に推論プログラムをデプロイし、だれでもどこでも利用できるプラットフォームを構築する。具体的な研究計画は以下の4段階で設定している。 ①肺血流シンチグラム画像の収集とラベリング、適切な学習モデルの構築 ②構築した画像診断プログラムの前向き診断精度検証 ③WEBプログラム公開(画像データの循環システム構築) (④多入力(CT、検査値トレンド等)による精度向上、予後予測への展開)現在の進行状況は以下のとおりである。①に関して、300例の症例収集とラベリングを行っており、学習モデルが構築できるスケールである。引き続き、高精度の学習モデルを構築するために症例の蓄積を継続する。100件/年の件数で肺血流シンチグラムを実施しているため、100件/年の教師データ取得が可能であるが他施設共同研究へと発展し、数千規模の教師データを得ることで診断精度を向上させることがより良い機器の開発につながる。②前向き検討については令和3-4年度にかけて実施予定であるが、新型コロナウイルス感染症による診療への負担増から実施できていない。 ③推論プログラムをデプロイするためのWEBページを作成したが、技術的ハードルが大きいことが判明した。研究代表・分担者のみで解決は困難であり、画像認識をWEBページにデプロイする専門技術者へアウトソースする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学習モデルを探索するための基礎となる学習データは年間100件ずつ増加し、ラベリングも行っている。これらのデータを用いた学習モデルの診断精度は90%前後を達成している。今後も自施設内での教師データは追加を継続する。学習モデル構築と並行して推論プログラムのWEBページへのデプロイ、WEBページ(画像診断プログラムを展開するためのプラットフォーム)の構築といった研究プロジェクト全体を並行して遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は ・新規教師データを追加し、学習モデルの精度向上を目指す ・WEBページへの推論プログラムのデプロイ ・利用しやすいWEBページ(画像診断プラットフォーム)の構築 を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは令和4年度でも収束のめどが立たない状況であった。国内・国際学会が自粛され、学会発表の場が制限された(学会参加費、交通費、宿泊費の繰り越し)。現地開催の学会がなくなったため、WEB開催に備え、オンライン会議システム等の導入で代替している。令和5年度以降は新型コロナウイルスの5類感染症への制度変更が見込まれており、これにより学会活動や研究活動の再開が期待される。 当該疾患患者の受診控えも解消しつつあり、学習データの蓄積が再開できる目途がたってきている。100件/年の教師データが収集されており、90%の精度で診断できる診断モデルは完成している。令和5年度は応用するためのツール(WEB、アプリ)の開発に予算を割く予定である。
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