研究課題
糖尿病性動脈硬化症の病態解明を目的として研究を遂行した。研究期間中のコロナ禍の影響から、多層的・多角的に研究を進めた。①. ヒト大動脈手術サンプルを用いて、病理学的手法・メタボローム解析・RNAマイクロアレイ解析による検証を行い、動脈硬化の早期病変から進行病変にかけて変動する主たる代謝経路として、キヌレニン代謝を同定した。加えて、末梢血単核球由来のマクロファージを用いた上記代謝関連酵素の機能解析実験から、炎症病態との関連性を見出した。一方、糖尿病性血管病変においてキヌレニン代謝亢進との特異的関連を示唆する所見は見い出せなかった。②.ストレプトゾシン誘発糖尿病マウスから単離・選別したマクロファージの解析において、非糖尿病マウスのマクロファージとの対比検証から、GLUT-1の発現低下に加え、グルコース取り込み能・解糖機能及びミトコンドリア機能の低下を確認した。プロテオミクス解析では、糖尿病マウスのマクロファージにおける発現蛋白の特徴を明らかにした。更に、糖尿病マウスにおけるインスリン投与およびSGLT-2阻害薬投与後のマクロファージの代謝解析から、マクロファージの糖代謝に対する糖尿病の影響は、高血糖ではなくインスリン欠乏による事が示唆された。③.インスリンシグナルと関連するmTOR経路と血管代謝及び血栓性の関係について、家兎動脈硬化ステント留置モデルを用いた検証から、mTOR阻害薬であるエベロリムス溶出性ステントは、平滑筋細胞の浸潤抑制、組織因子発現の低下、グルタミンを含むアミノ酸代謝産物の増加を、留置血管において引き起こす事を確認した。④. 心血管疾患による入院患者において、フレイル・サルコペニア、脂質異常症、血中アミノ酸代謝の解析を行った。上記解析結果から糖尿病性動脈硬化症進展予防スキームの構築に向けた基盤的知見を得た。
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