研究実績の概要 |
呼気ガス分析装置を用いた心肺運動負荷試験で得られる様々な指標は、慢性心不全患者の生命予後予測因子、重症度評価、治療効果判定に極めて有用である。特に最高誘摂取量(peak VO2)は重要な指標として知られており我々も過去に報告を行っている(Sato T et al; Eur J Prev Cardiol. 2017)。しかしながら、peak VO2 を中心とした指標は心肺運動試験が実施可能な患者で得られるため、年齢、フレイル、サルコペニア、その他の並存疾患を有する患者では測定できない。一方、安静時指標は全ての患者で測定可能である。また、過去に我々は慢性心不全患者における栄養指標について提唱した(Takiguchi M, et al, Eur J Clin Invest 2014、Sato T, et. al. Heart Vessels 2015、Yoshihisa A, et al. Open Heart 2018)。呼気ガス分析装置を用いた安静指標を用いて静時エネルギー消費量(REE)が間接的に測定できることに着目し、慢性心不全患者の栄養状態評価としてREEが有用であるかについて検討を行った。心肺運動負荷試験を施行した慢性心不全1,185名について、REE中央値は1185kcal/dayであった。REE低値群は 年齢が高値で女性の頻度が高く、心房細動の並存が高かった。また、Body Mass Indexが低く、推定糸球体濾過率、peak VO2が低値で、過去に報告された栄養指標(コリンエステラーゼ、アルブミンなど)が悪化していた。また、REE低値群ではBNPは高値であったが、左室駆出率は両群で差を認めなかった。さらにCox比例ハザード解析にてREEは独立した心血管イベント、心臓死、全死亡の予測因子であった。REEは慢性心不全患者における栄養指標として有用である可能性が示唆された。
|