研究課題/領域番号 |
20K17136
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岡谷 千晶 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30633648)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 疾患関連糖鎖変化 / 心筋線維化 / 心臓筋線維芽細胞 / 糖鎖プロファイル解析 / 組織染色 |
研究実績の概要 |
多くの心疾患でみられ、心不全をもたらす心筋線維化の評価及び治療のためのバイオマーカーが求められている。そこで本研究では、心筋線維化に対するバイオマーカーの開発を目指して、心筋線維化を担う細胞ではどのような糖タンパク質にどのような糖鎖修飾変化が生じるかを明らかにする。本研究からは、「線維をつくる活性」を評価するマーカーが得られるだけでなく、心筋線維化の分子メカニズム解明への重要な基礎情報が得られると期待できる。 当該年度は、ヒト心筋線維化モデル細胞に特徴的な心筋線維化関連糖鎖の同定を試みた。まず、筋線維芽細胞マーカー(αSMA)の発現上昇などを指標としてヒト心臓線維芽細胞からの心筋線維化モデル細胞の作出条件(播種密度、薬剤濃度、薬剤刺激時間など)を最適化した。最適条件にて作出したヒト心筋線維化モデル細胞と対照細胞からタンパク質試料を調製し、レクチンアレイにて比較糖鎖プロファイル解析を行った。その結果、全細胞ライセート、培養上清、細胞親水性画分の比較解析では群間に有意な差が見られなかった一方で、細胞疎水性画分の比較解析では複数レクチンのシグナルが線維化モデル細胞にて増加することを見出した。その結果は、これまでに心筋線維化モデルマウスで認められた糖鎖変化と一致するものであった。また、上記解析で見出されたレクチンを用いたモデルマウス心臓切片および市販ヒト心臓切片の組織染色により、一部のレクチンでは線維化過程の進行により当該レクチンの染色量が増加し、当該レクチンが線維化の検出に有効であることが示唆された。現在、心筋線維化関連糖鎖を有するタンパク質の網羅的同定に向けて、細胞試料調製法の最適化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴い、年度途中より研究を中断しており、心筋線維化関連糖鎖を有する糖タンパク質の検出・捕集に有用なレクチンの絞り込みまでには至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度から研究を再開する。線維化の程度が異なる細胞をレクチンによる各種解析に供し、2020年度に見出した候補レクチンから、より軽度・早期の線維化の検出に有用なレクチンを絞り込む。各種心疾患患者の臨床心臓組織切片について、心筋線維化関連糖鎖認識レクチン及び各種細胞マーカーを用いた多重染色を行い、当該レクチンにより心臓組織中の筋線維芽細胞を特異的に検出できるかを検証する。また、レクチン染色性と臨床パラメータとの相関を検討する。また、細胞試料から、心筋線維化関連糖鎖認識レクチンで捕集した糖タンパク質画分を調製し、質量分析を用いたグライコプロテオーム解析に供する。この解析により、心筋線維化関連糖鎖が付加した糖タンパク質を網羅的に同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴い、年度途中より研究を中断していたため、遂行できなかった実験計画分の研究費を次年度に持ち越すこととした。これらの研究費は、次年度に実施する実験に使用する消耗品(試薬類、プラスチック器具等)のほか、研究加速化のための人件費として使用する。
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