研究課題/領域番号 |
20K17137
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
浅野 遼太郎 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 非常勤研究員 (60827004)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 網羅的遺伝子発現 / RNAシークエンス |
研究実績の概要 |
PAHは、遺伝的素因、膠原病、短絡性心疾患、肝障害など様々な背景疾患と関連して、肺動脈にリモデリングを生じる。肺動脈リモデリングの機序は未だ不明だが、何らかの背景疾患に共通した経路で障害を受けて肺高血圧症病態を形成している可能性が高い。肝臓は、多臓器と密接に連関する人体最大の臓器で、肺高血圧症でも重要な役割を果たしている可能性がある。本研究では、肝臓に着目してPAHの新規病態メカニズムを探索することを目的とした。 我々は、肺高血圧症モデル動物では共通して腸内細菌層変容がみられることを明らかにしてきた。腸内細菌由来代謝物は門脈を介して肝臓へ輸送され、代謝を受けるが、我々は、腸内細菌叢変容に伴う腸内細菌由来代謝物の変化が、肝臓での代謝や何らかの分子の発現誘導を介して肺動脈リモデリングに関与していると考えた。腸内細菌由来代謝物の肝臓での代謝の影響をみるために、門脈結紮モデルを作成した。このモデルは門脈体循環シャントを認め、腸管から吸収された物質が肝臓に輸送されず、十分に代謝されない。この門脈結紮モデルに対して、低酸素負荷による肺高血圧症誘導をかけた結果、肺高血圧症病態の改善することを明らかにした。すなわち、腸内細菌由来代謝物が肝臓に流入しずらくなったことで、PAH病態促進に向かう肝臓変化が起こらないと考えられた。そこで同モデルの肝臓を用いて、RNAシークエンシング解析を行い、網羅的に遺伝子発現変化を比較することとした。現在、解析途中であるが、複数の興味深い遺伝子発現変化が観察されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響があり、動物実験や臨床検体収集ができない期間もあったが、当初予定していた動物モデルでの肝臓の網羅的遺伝子発現解析を実施することできた。また臨床検体の収集も徐々に再開しており、令和3年度は候補分子の選定とその分子機能や動態を解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)肝障害・門脈圧亢進症モデル動物を用いた網羅的遺伝子発現解析 低酸素負荷(肺高血圧症誘導)と部分的門脈結紮で共通して増減する 遺伝子発現から、肺高血圧症病態と関連性が高い候補遺伝子 X を同定する。さらに候補遺伝子Xについてノックアウト動物を作成し、肺高血圧症病態における意義を観察する。 (2)PAH 患者の臨床検体を用いた候補分子の動態解析 (1)について肺高血圧症との関連性がみえた場合、候補遺伝子Xの下流分子について集積しつつある臨床検体(血漿、血清、末梢血単核球分画、便検体)を利用して、動態や臨床情報との関連性を解析し、バイオマーカーや治療薬標的としての有用性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、COVID-19の影響により動物施設が一時閉鎖されるなど、予定していた分子生物実験が十分にできず、ドライ実験を中心に行わざるを得なかった。しかしながら次年度は、前年度予定していた分子生物実験などを急ピッチで進め、研究計画の遂行に全力で取り組む予定である。
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