心肺運動負荷、心エコー図検査、および血行動態を包括的に評価することは、詳細な疾患重症度の層別を可能にして、構造的心疾患をもつ心不全患者の診療の質改善につながると考えられる。本研究では、三尖弁逆流(TR)の重症度と運動耐容能、予後との関連について検討した。 TRの重症度が慢性心不全(CHF)患者の運動耐容能や予後に与える影響については不明な点が多く、本研究はこれらを明らかにすることを目的とした。 当院で心肺運動負荷試験および心エコー図検査を受けたCHF患者連続511例について、TRの重症度と運動耐容能の関係及び、心不全入院または死亡の複合有害事象発症の関係について検討した。 結果として、TR患者ではNon-TR患者(n=127)と比較して、最大運動負荷及び最大酸素摂取量が低値かつ運動時の換気応答が亢進していたが、それらはMild-TR (n=324)と比較してSignificant-TR (>modarate-TR、n=60)でより顕著であった。観察期間3.3年(中央値)で、90例の複合有害事象が発症し、Significant-TRは他群と比較して有意にイベント発症が多かったが、Mild-TRではNon-TRよりもおよそ3倍のイベントが観察された。多変量解析では、TRの重症度は独立して有害事象発症リスクと関連していた(HR [95%CI] = 2.19 [1.42-3.38])。 TRの重症度は、CHF患者のリスク層別化に有用であることが示唆された。TRを標的とした治療がCHF患者の運動耐容能や予後を改善するかどうかに関するさらなる研究をすすめている。
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