研究実績の概要 |
本年度は特発性心筋症患者の遺伝子解析を継続した。遺伝子解析および包括的な心エコー図検査を行い、データベースの作成を行った。ターゲットシークエンスにより原因遺伝子が不明であり、かつ家族性発症が濃厚な場合、次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析による遺伝子の探索を行った。合計123例の特発性心筋症患者の遺伝子解析結果、心エコー図検査、予後データを含めたデータベースを作成した。123例中、ラミンA/C遺伝子変異を16例、タイチン遺伝子変異を7例、他の心筋症関連遺伝子変異を17例に認め、83例においては遺伝子変異が検出されなかった。110名でフォローアップの心エコー図検査が施行された。2回の心エコー検査の間隔の中央値は1342 日であった。4群での比較において、タイチン遺伝子変異群においてはベースラインのLVEFは有意に低値であったが、経過中に有意な改善が認められた (30±9% to 52±10%, p=0.008)。4群間での比較において、右室機能指標(TAPSE、RVFAC、右室拡張末期面積、右室自由壁長軸方向ストレイン)および有意な三尖弁逆流(中等度以上)の割合はベースラインで有意な差は認められなかったが、フォローアップ時はラミンA/C遺伝子変異群において有意に右室拡張末期面積が大きく(p=0.046)、有意な三尖弁逆流の割合が高値であった(p<0.001)。タイチン遺伝子変異を伴う患者はベースラインのLVEFは低値であるが、治療に対する良好な反応が認められた。ラミンA/C遺伝子変異を伴う患者は治療に対する左心機能の改善を認めず、右心拡大と三尖弁逆流が増悪し、右心不全の進行を来す可能性が示唆された。
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