研究課題/領域番号 |
20K17145
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 勝洋 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10841950)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
肺高血圧症の主病変部である肺細動脈局所のシグナル異常に関して、依然として不明な点が多く、病態解明のためにはその異常を明らかにすることが必要不可欠である。本研究課題では、病態に関与する肺高血圧症の主病変部である肺細動脈内皮細胞を、独自に開発した方法を用いて単離し解析することで病因を明らかにし、病態解明のみならず肺高血圧症へ対するバイオマーカーの開発や新規治療戦略の開発につなげることを目的としている。低酸素負荷誘発性肺高血圧モデルマウス及び正常圧下で飼育したマウスの両者より肺細動脈内皮細胞を単離し、RNAを抽出後に次世代シークエンサーを用いて遺伝子発現量解析を行い比較検討した。解析の結果、1000種類以上の遺伝子が有意に差次的に発現していることが明らかとなった。差次的に発現を示す遺伝子に関して、パスウェイ解析やGene Ontology解析を行ったところ、細胞間接着、細胞外基質や血管新生に関与する分子が発現変動していることが明らかとなり、これらの分子が肺高血圧症の病態形成に関与していることが示唆された。解析より得られた候補分子に関して、肺高血圧モデルマウスから取り出した肺組織を用いて、免疫組織染色を行い発現量の評価を行なった。遺伝子発現量解析の結果と免疫組織染色の結果を比較検討して、候補分子の更なる選別を行なった。 1、候補分子の内、2種類の遺伝子に関して遺伝子欠損マウスの作製を進め、完成した1つのマウスの解析を進めているが、カテーテルを用いた循環動態の評価及び組織学的な検討を行なっているが、現時点では有意な変化は観察されていない。もう1種類の遺伝子欠損マウスの作製は完了しつつある。 2、別の候補遺伝子に関して、アデノ随伴ウイルスとCRISPR-Cas9のシステムを組み合わせた個体で遺伝子修飾する系の確立を行なった。肺血管内皮細胞特異的に発現が欠失することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、個体での遺伝子の影響を評価するために、候補遺伝子に対する遺伝子欠損マウスの開発を進めているが、確立するのに予想以上に時間を要している。さらにアデノ随伴ウイルスを用いた遺伝子修飾システムの確立を行なっている。これらの到達度は当初の研究計画の予定を考えるとやや遅延していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、作製した遺伝子欠損マウスの個体での解析を進める。さらに並行して行っているアデノ随伴ウイルスベクターを用いての機能解析を行う。培養細胞を用いて再度検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延のために物品の欠品や納入が遅れ、研究計画が全体としてずれ込んだ。大学の動物実験施設の改修工事のために、動物を用いた実験に想定以上に時間を要した。また、遺伝子欠損マウスの作製にも予想以上に時間を要した。以上より研究費の一部を次年度に使用することとなった。 抗体、組織染色試薬、細胞培養試薬、PCR試薬、分子生物薬実験試薬を購入予定
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