研究課題
糖尿病患者では腸管の脂質吸収が亢進しており、最近になり食事由来の酸化ステロールである7-ketocholesterol(7KC)の血中濃度が、心血管疾患および糖尿病患者で高いことが報告された。長期間に及ぶ7KCの吸収・蓄積が、糖尿病動物モデルにおいてどのような影響を及ぼし表現型を呈するかを検証するために、通常食(CD、1%コレステロール含有)または高脂肪食(WD、1%コレステロール含有)と、さらにそのいずれかに0.01%(w/w)7KCを添加した餌(CD+7KC、WD+7KC)を作成し、6週齢のオスのob/obマウスおよびdb/dbマウスに4週間投与した。その結果、体重や肝組織重量、血清脂質値は7KC添加による有意な変化を認めなかったが、血中ALT値が有意に上昇していることを見出した。そこで、7KCが肝組織に及ぼす影響とそのメカニズムの解析を行うこととした。肝組織のOil Red O染色では、CD投与群、WD投与群に比し、CD+7KC投与群、WD+7KC投与群において脂肪滴の蓄積が有意に促進され、脂質抽出分析から肝組織中のトリグリセリド量が有意に増加していることが分かった。またF4/80染色では、CD投与群、WD投与群ともに7KCの添加により、マクロファージの浸潤が増加していた。さらに肝組織におけるmRNA・蛋白発現解析では、7KC添加食群において、炎症性サイトカイン発現が増加し、β酸化関連蛋白やオートファジー関連蛋白の発現が低下していることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
糖尿病動物モデルにおける7KCの影響をみるために、特殊飼料(CD、WD、CD+7KC、WD+7KC)の作成、ob/obマウスおよびdb/dbマウスへの投与実験と、肝組織における表現型とそのメカニズムの解析を実施することができた。今後、心臓の表現型について解析する予定である。また既にGC-MSによる酸化ステロールの測定系を確立している。
6週齢のオスのob/obマウスおよびdb/dbマウスに、①CD、②CD+7KC、③WD、④WD+7KCを4週間投与した検体について、心臓組織像の確認、心臓からの酸化ステロール抽出とGC-MSによる7KCの測定を行う。また心不全マーカーやミトコンドリア機能に関わる蛋白のmRNA、蛋白発現について評価する。さらに同じモデルを用いて、長期間(16週間)の食餌投与実験もあわせて実施する予定である。
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Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
巻: - ページ: -
10.5551/jat.60764
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Frontiers in Endocrinology
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