研究実績の概要 |
ナトリウム利尿ペプチド(ANP/BNP)両遺伝子はゲノム上隣接して存在し、その遺伝子産物は血管拡張・利尿作用を持つペプチド性ホルモンであり、心不全重症度指標・心不全治療薬として臨床で頻用されている。我々は不全心でANP/BNPの発現が誘導される機序を解明するため、先行研究にてANP/BNP遺伝子を誘導する650塩基からなる心不全感受性エンハンサー領域(CR9)を同定した(2014 FASEB J 松岡)。その後の研究でCR9領域のノックアウトマウスでは心臓でのANP/BNP両遺伝子の発現がほぼ消失したことから、CR9は心不全を感知して遺伝子発現を誘導するエンハンサーであるという新知見を得た。更にCR9ノックアウトマウスの心不全モデルでは心不全増悪を認め、CR9による遺伝子発現制御は心不全発症予防に必須であることも示唆された。CR9による転写制御機構やヒト不全心におけるCR9の機能は未だに不明であり、本研究においてCR9転写制御機構の更なる解明を行い、遺伝子治療応用への可能性を探ることを目的とした。 当該年度では、CR9転写制御機構の解明のためにCR9ノックアウトマウスのクロマチン修飾解析を行うためにCut&Tag-Seqを試みた。転写活性化クロマチン修飾の指標であるH3K4me3, H3K27acやH3K27me3などクロマチン修飾解析に成功した。またヒトにおけるCR9の機能を検討するために、CR9をノックアウトしたヒトiPS由来心筋細胞を作製し、ANP/BNP遺伝子発現などの機能解析を行った。遺伝子治療応用については、ルシフェラーゼレポーター遺伝子上流にCR9を組み込んだAAVベクターを作製し、マウスで発現確認を行った。
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