研究課題/領域番号 |
20K17154
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
赤澤 祐介 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (10837579)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CFD解析 / Simple CoA / 圧較差 |
研究実績の概要 |
本研究では、複雑な解剖を有する先天性心疾患(Congenital Heart Disease、CHD)症例における、肺動脈狭窄(Pulmonary Stenosis、PS)に対する解剖学的情報から数値流体シミュレーション(Computational Fluid Dynamics、CFD)解析を行う。PSにおいて、多発狭窄、分岐部末梢性病変などの複雑病変は圧損失(=圧較差)の過小評価が生じるとされており、治療方針の決定が困難であるが、CFD解析を行うことで真の解剖学的重症度を明らかにし、複雑な解剖学的構造を有するCHDの病態解明、治療応用を行うことを目的としている。 まず初めに、単独狭窄病変においてCFD解析により得られた圧較差をカテーテル検査にて得られる実測の圧較差と比較し、その精度を検証することとした。血流解析は,信頼性の高い商用の流体解析ソフトウェアFluent(ANSYS社)を用いて次の手順で行った。 実際の血流にあわせた流速などの諸条件を用いて、本申請で購入するコンピューターで血管内の血流の様子を数値シミュレーションする。流速条件は計算が比較的容易な定常流として解析することとした。 単独狭窄病変を有し複雑な心内合併症を伴わない疾患として、単純型大動脈縮窄症(Simple CoA)を対象とした。当院でのCoA症例が新生児ならびに乳児症例が多く、安定した心臓CT画像が得られていた症例が限定されていた。そのため、心室中隔欠損症を合併したCoAの修復術後(心内の血行動態を正常心形態として解析可能)に縮窄部の再狭窄を生じた10代の症例を選択した。CFD解析では圧格差=15mmHgであり、カテーテル検査での実測圧格差=20mmHgと僅かな乖離(過小評価)を生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
CFD解析の精度を検証するため、Simple CoA症例における、CFD解析と心臓カテーテル検査との比較検討を行うことを計画当初の予定としていた。しかし、CoA症例は新生児ならびに乳児症例が多く、安定した心臓CT画像が得られていた症例が限定されてしまった。また、安定したCT画像が得られていたとしても、心室中隔欠損症など血行動態へ影響を与える可能性のある心内合併症があり、精度検証には適さない症例も含まれていた。また、解析可能であった1症例でCFD解析を行なったが、CFD解析結果とカテーテルによる実測結果に乖離が生じており、原因の検索に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、1症例目のCFD解析結果とカテーテルによる実測結果の乖離に関する原因の考察として、心系数2.5と仮定して解析を行なったが過小評価であった。これは、心室の収縮期と拡張期の時間が関連しており、収縮時間は全心周期の1/3であることを考慮し、心係数を調整することでより正確な値が算出可能と考え、現在再解析中である。CoA症例は3例程度で解析を行い、整合性が得られたところで、本研究の主題である肺動脈狭窄病変を有する先天性心疾患患者における検討を開始する。目標症例数は20症例としている。肺動脈狭窄はCoAと比較し、症例数が多く、既に当院小児循環器科の協力も得ており、安定したCT撮像が可能な年齢の症例が主となるため速やかに解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
流体解析ソフトウェアのリリースに関して、申請時は900,000円で計上していたが、交付金額は600,000円であったため、リリースのtask数を減らし550,000円の支払いとなった。申請時はハイパフォーマンスコンピューターを物品費として計上していたが、当施設のコンピューターでの解析が可能であった。また、コロナウイルス感染症の拡大により学会がオンライン開催となり、旅費が不要であった。次年度使用額と翌年度助成金を合わせて、ソフトウェアリリースのtask数を増やし、解析効率を高める予定である。
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