骨代謝と心不全予後に関する前向き研究を行った。当院に入院した心不全患者連続688名を調査し、骨代謝マーカーであるTRACP5bを低値群、中間群、高値群と3群化し、3群間において、患者背景、検査所見、運動耐容能及び予後について比較検討した。心エコーデータに関しては、左心系、右心系を含めた各種パラメーターについて3群間で有意差は認めなかったが、心筋重量係数に関しては、TRACP5b高値群で有意に高値であった。心肺負荷試験に関しては、TRACP5b高値群で運動耐容能が有意に低下していた。また、TRACP5bは既報で心不全予後と関連が実証されているオステオプロテゲリン(OPG)と強い正の相関があること、総心臓死、総心イベントいずれに関してもTRACP5bが高値になればなるほどイベントが有意に高率であること、TRACP5b高値は総心臓死ならびに総心イベントの独立した予後規定因子であることなどを突き止めた。以上の研究結果を日本循環器学会学術集会、アメリカ心臓病学会等で発表し、CJC Openに投稿、アクセプトされた。今回は臨床研究のみで動物実験に関しては施行できなかった。日常診療で測定できるTRACP5bが心不全の予後を規定する因子になりうることが証明され、心不全リスク層別化および管理の指標のひとつとして活用することができ、心不全診療の改善に寄与するものと考えている。
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