研究課題/領域番号 |
20K17159
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
北田 諒子 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (70735050)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腫瘍循環器学 / 薬剤性心筋症 / 乳がん / トラスツズマブ / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
日本人の約3人に1人が悪性新生物で亡くなっている。がんの罹患率が増加する一方で、治療法の進歩で寛解率や治癒率も上昇している。乳がん患者においても同様で、それに伴い、アントラサイクリン系薬剤や分子標的治療薬、特にHER2阻害薬であるトラスツマブ(TRZ)による薬剤誘発性心筋症も多く経験されるようになった。TRZの代表的な副作用の一つに左室収縮能の低下による心不全があり、20人に1人程度の頻度で発症する。薬剤誘発性心筋症は、時に致死的となるため、発症予測、治療法の確立は急務である。 TRZによる薬剤誘発性心筋症の危険因子として、50歳以上、基礎心疾患の存在、ドキソルビシン(DOX)の併用があげられる(J. Clin. Oncol., 23: 2900-02,2005.)。機序としては、心筋細胞障害と血管内皮細胞障害の二つが考えられている(Circ. Res., 111: 1376-1385, 2012.)。HER2たんぱく質が心筋の恒常性維持に重要であることは動物実験により解明されている。多くは投与を中止すると改善するが、心不全を発症する患者の遺伝背景や心毒性をきたす分子機序は不明である。 本研究では、乳がん患者から採取した血球からiPS細胞を樹立し、心筋に分化させることで、患者の遺伝背景を持つ心筋細胞のプラットフォームを作成し、TRZ添加後の細胞応答を心不全発症例と非発症例で比較検討する。本研究により、TRZによる乳がん化学療法による心毒性のメカニズムを解明し、心毒性を生じるリスクの高い患者を層別化し、最終的には治療法の開発へとつなげていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、本年度は、乳がん患者において、トラスツマブ(TRZ)とドキソルビシン(DOX)併用で心不全を発症した患者および対象症例からiPS細胞を樹立した。当初は4症例を計画していたが、現状2症例、対象1症例からのiPS細胞の樹立にとどまっている。iPS細胞の多分化能について評価した後、iPS細胞を心筋細胞へ分化させる。分化させた心筋細胞を採取し、心筋細胞への分化し、心筋細胞への分化を確認した。評価後、day24の心筋細胞を採取し、各患者群でプロテオミクス解析を行う。現在、心筋細胞への分化を評価している段階であり引き続き、薬剤負荷による違いについて評価している。また、引き続き、乳がん患者における治療後の対象患者からの血液採取予定である。
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今後の研究の推進方策 |
山中らにより樹立されたヒトinduced pluripotent stem cell(iPS細胞)の技術で、患者のiPS細胞を作成し、様々な細胞に分化させ、毒性の評価や、分子機序の解明が可能となり、分化させた心筋細胞をプロテオミクス解析し、発現を制御する関連遺伝子の相違をみることで、遺伝背景を解明し、治療法の発見が可能と考え研究を進めている。 TRZにより障害を受けた細胞と細胞障害を受けないiPS細胞由来の心筋細胞の間で、どのような細胞特性の相違が存在するのかを解析を引き続き行い、心筋障害を引き起こす原因となる因子および心筋障害を予防する治療法の開発を発見していきたい。 具体的にはさらなる培養細胞を管理し維持して研究を進める必要があり、それに対して、注力し、解析を進める予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
TRZにより障害を受けた細胞と細胞障害を受けないiPS細胞由来の心筋細胞の間で、どのような細胞特性の相違が存在するのかを解析を引き続き行い、心筋障害を引き起こす原因となる因子および心筋障害を予防する治療法の開発を発見していきたい。 具体的にはさらなる培養細胞を管理し維持して研究を進める必要があり、解析に費やす費用が多くなると予想したため、本年度に使用する予定となっている。
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