研究実績の概要 |
本研究では、既知の肺高血圧症の原因として知られる、BMPR2, ENG, ACVRL1, RNF213などの遺伝子の病的バリアントが検出されなかった家系を対象に全ゲノム解析を行い、新規の原因遺伝子・病的バリアントを探索することを目的としている。全ゲノム解析では、エクソーム解析では検出困難な数百~数万塩基の欠失/挿入、コピー数多型などのゲノム構造異常を検出することができる。これらのゲノム構造異常をDRAGEN、XCAVATOR、GenomonSVの3つのツールを組み合わせて検出を試みた。これらの解析パイプラインの整備を行い、百寿者および日本人健常一般集団におけるアリル頻度のアノテーションを実施することで、ゲノム構造異常の病的意義を推定を可能とした。 解析対象となる患者のリクルートに関しては、コロナ禍の影響もあり、2020年度には1家系のもやもや病と肺高血圧症の家族歴を伴う患者・家族に対して、全ゲノム解析を実施した。その結果、結合組織に関連する遺伝子の変化を検出し、原因と推定された。2021年度は2家系の原因不明の肺高血圧症患者に対してトリオ解析を実施したが、明らかな原因と推定される遺伝子異常は推定されなかった。さらに4家系の特発性肺高血圧患者・家系の候補の絞り込みを行っており、2022年度に解析を行う方針である。そして解析の結果、候補となった遺伝子について、肺高血圧者のコホートでの統計学的解析を行い、リスクの評価を行う。
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