動脈硬化による心血管イベント発症リスクはスタチン投与後にも残存し、残余リスクの一つとして炎症が注目されている。慢性炎症性疾患である関節リウマチ(RA)患者は、合併する心血管イベントによる死亡率が高い。関節炎の慢性炎症が動脈硬化進展に影響を及ぼすと考えられているが、その機序は解明されていない。関節炎が動脈硬化に及ぼす影響を検討することは、動脈硬化進展の残余リスクの解明、新規治療の確立につながる。その方法として動物モデルを用いる方法があるが、関節炎と動脈硬化を同時に発症する動物モデルは存在しなかった。 研究代表者は、慢性関節炎モデルであるSKGマウスと、動脈硬化モデルであるApoEノックアウトマウスを交配させ、関節炎と動脈硬化を同時に発症するモデルマウス(ApoEノックアウトSKGマウス)を樹立した。 次に、ApoEノックアウトSKGマウスの関節炎と動脈硬化の関連を検討するため、関節炎を誘導する群と誘導しないコントロール群を設定し、各群の関節炎、動脈硬化の程度を評価した。8週齢で関節炎を誘発して16週齢で動脈硬化の程度を比較検討した。関節炎の発症を誘発した群は誘発しなかった群に比較して、動脈内膜面の粥状硬化面積が有意に増加し、大動脈弁輪部の動脈狭窄率が有意に上昇した。これは、炎症病態が動脈硬化進展に直接影響を与えることを示唆するものであり、動脈硬化病態形成の解明に大きな意義があるものと考えている。この結果は、第64回日本リウマチ学会総会にて発表した。
|