肺がんはわが国の悪性新生物の死因の第一位であるが、分子標的薬あるいは免疫療法の開発が急速に進んでいる。特に非小細胞肺がん (以下、NSCLC) においては分子標的薬に対する薬剤耐性機構が徐々に明らかにされている一方で、小細胞肺がん (以下、SCLC) に関しては30年以上もの間、プラチナ併用化学療法 (CDDP or CBDCA + VP-16療法) が一次治療として確立していたが、バイオマーカーを基にした分子標的薬の開発は成功していない。今年、本邦にて免疫チェックポイント阻害薬 (抗PD-L1抗体) であるAtezolizumabをプラチナ併用化学療法に追加する一次治療が保険承認されたが、全生存期間中央値はわずか2カ月程度しか延長せず、NSCLCと比較しても免疫療法の効果は不十分である (Horn L et al. N Engl J Med 2018) 。また、プラチナ併用化学療法に対し速やかに抵抗性となった再発SCLC (refractory relapse) に対してはNGTあるいはAMR単剤が実施されるが、いずれも全生存期間中央値は約6ヶ月と不良 (Pawel J et al. J Clin Oncol 2014) であり、有効な治療が確立されていない。本研究ではSCLCの治療抵抗性にケモカインネットワークが強く関与しているという仮説を検証し、これを標的とした新たな治療開発を行うことを目的とする。申請者はケモカインであるCCL2の産生を増加させる転写因子であるFOXK1の発現上昇が、SCLCの標準化学療法 Cisplatin (以下、CDDP) に対するアポトーシス抵抗性に関連があることを新たに見出した。この結果から、FOXK1-CCL2-CCR2経路の活性化がSCLCにおけるCDDP耐性の原因として着目し、本研究を進めている。
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