研究課題/領域番号 |
20K17186
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
新井 航 札幌医科大学, 医学部, その他 (30837224)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タイトジャンクション / HDAC阻害薬 |
研究実績の概要 |
細胞間接着因子であるタイトジャンクション分子は、細胞のバリア機能を維持するのに重要な分子である。タイトジャンクション分子は最近、正常細胞と比較し、腫瘍細胞にて変化しており、細胞遊走や細胞周期短縮など腫瘍の悪性化に関与していることが報告されている。3細胞間接着因子であるlipolysis-stimulated lipoprotein receptor (LSR)は様々な腫瘍において発現低下による悪性化の関与が報告されているが、肺がんにおいては検討されていない。我々は肺腺癌細胞株A549においてLSRのノックダウン処置により2細胞間接着因子であるClaudin-2の発現が上昇することを発見し、この変化が腫瘍増殖因子EGFを介して起こっていることを解明し、同じく腫瘍に上皮間葉転換を引き起こすEGF-βの関与もわかった。また、切除した肺の正常部分より培養した正常初代培養細胞において同様の実験を行い、腫瘍細胞との比較を行った。以上の研究成果を英語論文として発表した。また、主に血液腫瘍の分野で臨床使用が広がっているHDAC阻害薬について、肺がんに対する臨床応用を視野に研究を行っている。研究の結果、肺腺癌においてHDAC阻害薬はタイトジャンクション分子の発現を変化させることにより抗腫瘍作用を示すことがわかった。HDAC阻害薬の抗腫瘍効果のメカニズムは不明な点が多く、また、肺がんにおける基礎研究が非常に少ないため研究の独自性が高い。HDAC阻害薬のタイトジャンクション分子を介した肺がんに対する抗腫瘍作用についても英語論文として発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は順調に進行しており、2編の英語論文の投稿を行った。
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今後の研究の推進方策 |
正常細胞の培養には時間がかかり、また、培養が確実に成功するわけではないことから、今後さらなる研究で詳しくHDAC阻害薬とタイトジャンクション分子の関係を調べる必要がある。また、使用している細胞株も2種類と限定されているため、同様の実験系を細胞株を増やして行う必要がある。また、細胞株以外にも、切除した腫瘍細胞からがん細胞を分離培養し同様の実験系を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
教室にて獲得していた別の科研費等研究費から優先して利用していたため。今後は本研究費を優先して研究に必要な抗体、培養液等を購入する。
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