研究実績の概要 |
主に、血液悪性腫瘍に合併する腫瘍随伴天疱瘡(PNP)と、薬剤に起因し発症する重症薬疹であるStevens-Johnson症候群 (SJS)およびその重症型である中毒性表皮 壊死融解症 (TEN)の臨床症状は非常に酷似している。本研究はその類似性に着目し、背景にある免疫学的機序の共通性を明らかにすることで、稀少難病である SJS/TENの病態解明の糸口とすることを目的とする。慢性呼吸器合併症をもつSJS/TEN患者を対象に、PNPに関連する自己抗体(抗Dsg3/1抗体、プラキンファミリー 蛋白抗体)の血清免疫学的検討を行った。当院眼科SJS外来通院中、もしくはSJS患者会の患者でSJS/TEN発症以来持続的に呼吸器症状を 有する患者を対象に患者集約を行った。研究期間の大半がコロナ禍であり通常診療が制限されるなか患者集約は困難を極めたが、最終SJS/TEN併発呼吸器障害を有する患者8名(血清7検体、喀痰上清1検体)、SJS/TEN後目後遺症を有し呼吸器症状のない患者10名(血清10検体)の解析を行った。久留米大学皮膚科のご厚意のもと表皮抽出液を用いた免疫ブロット法で抗Dsg3/1抗体、エンボプラキン抗体、ペリプラキン抗体、水疱性類天疱瘡の原因と考えられる表皮基底膜部抗原(ヘミデスモソーム構成蛋白であるBP180とBP230)に対する自己抗体、および 天疱瘡の原因となる表皮細胞間接着構造デスモゾームの接着分子であるデスモグレインに対する自己抗体を測定した。結果、SJS/TEN呼吸器症例・SJS/TEM眼症例ともに抗Dsg3/1抗体、BP180, BP230,エンボプラキンに対する自己抗体は陰性であった。一方ペリプラキン抗体については、SJS/TEN呼吸器症例血清全例で陽性所見であった。
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