研究実績の概要 |
本年度は、①肺癌検体を用いた糖鎖プロファイリング, ②in vitro, in vivo による糖鎖機能解析を行った。 ①肺癌検体を用いた糖鎖プロファイリング 肺癌バイオバンク検体(肺癌組織及び正常肺組織)を用いてレクチンマイクロアレイを行った。肺癌組織ではフコース糖鎖に特異的に結合するレクチン(AOL, AAL)との結合能が上昇していた。また肺癌組織、非癌組織におけるフコシル転移酵素(FUT1-9)の発現を定量RT-PCRで評価したところ、非癌組織と比較して肺癌組織ではFUT3の発現上昇を認めた。また、FUT3発現とAOL・AALの信号が高い相関性を示した。以上の結果より、肺癌組織ではFUT3を代表としたフコシル転移酵素により肺癌細胞表面上のフコース糖鎖が修飾されている事が示唆された。 ②肺癌糖鎖の機能解析 肺癌におけるフコース糖鎖の機能を明らかする為, 様々な肺癌細胞株に対するフコース阻害剤(6-アルキニルフコース)の効果をin vitroで検証した。6アルキニルフコースは肺癌細胞株の増殖能に影響を与えなかった一方で、一部の肺癌細胞株の浸潤能を有意に抑制した。また、A549に外的にFUT3を過剰発現させた所、コントロールと比較してA549の浸潤能が増大し、CRISPR/Cas9によりH322の内在性のFUT3をノックアウトした所、コントロールと比較して浸潤能が有意に低下した。続いて、肺癌細胞株を免疫不全マウスの尾静脈から注入する肺転移モデルを用いて、A549コントロール株とA549 FUT3過剰発現株で肺転移数を比較した所、コントロール群と比較してFUT3過剰発現群で肺転移数の増大を認めた。
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