研究実績の概要 |
前年度は、肺癌組織と正常肺組織を用いた糖鎖プロファイリングにより、肺癌組織ではFUT3を代表としたフコシル転移酵素 により肺癌細胞表面上のフコース糖鎖が修飾されている事が示唆された。またFUT3が肺癌細胞の浸潤能、転移能を制御する事を, in vitro, in vivoで明らかにした。 本年度は、①Tissue Micro Array (TMA) を用いた免疫染色, ②TMAで得られた糖鎖情報と臨床情報との統合解析を行った、③②FUT3が肺癌細胞の増殖能, 転移能を亢進させるメカニズムに関する解析を行った。 ①肺癌患者141例のTMAを用いてFUT3の免疫染色を行い、予後との関係を解析した. 病理学的にFUT3の染色強度をスコア化してscore0,1の低発現群、score2, 3の高発現群に分類をした所, FUT3低発現群と比較してFUT3高発現群で生存期間の有意な減少を認めた. ②浸潤能・転移能に関わる膜蛋白に注目し、フコース糖鎖のキャリア蛋白の解析を行った。A549にFUT3を過剰発現させた細胞株では、フコース糖鎖の一つであるSLXの発現が上昇した. またSLXで免疫沈降後、ウェスタンブロッティングを行った所、細胞接着分子であるITGB1, ALCAM, CEAの発現が見られ、SLXのキャリア蛋白である事が示唆された。 次にヒト肺癌組織と正常肺組織から得られたLysateを用いて同様の検証を行った所, 肺癌組織のみにITGB1, CEAの発現が見られた。またFUT3高発現株では, ITGB1の下流にあるSRC, FAKのリン酸化の発現がみられ、ITGB1等の細胞接着分子のフコシル化を介して浸潤能・転移能が亢進する事を示唆された。
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