研究課題/領域番号 |
20K17192
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 崇 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (20464836)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エピゲノム / 肺がん / 分化プログラム / 不均一性 / 肺大細胞神経内分泌がん |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、肺大細胞神経内分泌がん(LCNEC)症例を中心にホルマリン固定パラフィン包埋組織検体のH3K27ac クロマチン免疫沈降シークエンシング(ChIP-seq)解析を進めている。データを集積し、活性型エンハンサーのパターン、すなわち転写プログラムのパターンに不均一性があることを確認している。小細胞肺がんにおいて知られているASCL1、NeuroD1、POU2F3、YAP1といった神経内分泌細胞系統因子の個々の症例における優位性を、同じ悪性度の高い肺神経内分泌腫瘍に分類されるLCNECでも確認し、臨床的意義が示唆された。 また、肺がんにおける分化プログラムの多様性・可塑性を明らかにするための独自の切り口として、混合型肺がんのエピゲノム解析・ゲノム解析を進めている。その結果、混合型肺がんの活性型エンハンサーのパターンは各病理組織像を反映していることを見出した。例えば、腺がん領域においてはNkx2-1、扁平上皮がん領域ではp63といった細胞系統因子にsuper-enhancerを有しており、各々の分化プログラムが誘導される機構・分化プログラムに可塑性を生じる機構の有無を検討している。その検討から肺がんの分化状態の可塑性に関わる候補転写制御因子を同定しており、この候補転写制御因子についてCRISPR/Cas9システムによるノックアウトおよび過剰発現系、薬剤投与を用いて機能解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ChIP-seq解析実験に一時問題が生じtrouble shootingに時間を要していた。その後解決し、再度実験を進めている。同時併行で違うアプローチによって同定した候補転写制御因子の機能解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
LCNEC症例を中心に肺神経内分泌腫瘍のエピゲノム解析をさらに進め、データを統合解析する。LCNECの転写プログラムのパターンを明らかにし、LCNEC特有の分化制御機構を検討する。また、肺がんの分化状態の多様性・可塑性に寄与する候補転写制御因子の機能解析を進め、肺がんの分化プログラムの多様性・可塑性の解明、そして治療に結びつく脆弱性の有無の検討を行っていく。
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