特発性肺線維症は正常肺組織が破壊され、線維組織に置き換わっていく難病であり、肺の線維化に従い呼吸機能の低下をきたし、最終的には呼吸不全に至る。診断後の予後は個人差が大きいものの、平均3年と報告されており、予後不良な疾患である。その発症メカニズムは完全には解明されておらず、治療は限定的なものに限られている。このため、さらなる病態と治療法の開発が希求されている。 Mieapタンパク質はミトコンドリアの恒常性維持に働くことが報告されているタンパク質であり、特発性肺線維症の発症にミトコンドリアの機能異常が関与することが報告されており、治療ターゲットとして有望である。このため、この研究ではヒト手術検体を用いたMieapタンパク質の発現状況の検討やマウスモデルを用い、Mieapタンパク質の抑制や強制発現により肺線維化過程に影響が見られるかを検討した。 予備的検討として、肺腫瘍細胞株であるA549や正常ヒト気道上皮細胞や肺線維芽細胞の初代培養細胞に電離放射線による遺伝子ストレスを与え、Mieapタンパク発現が反応性に亢進することを確認した。同モデルにてMieapタンパクの発現を抑制することで、肺線維化に重要と考えられているミトコンドリアROSの発生が増強することを確認した。 次に、Mieapノックアウトマウスを用い、ブレオマイシンによる肺の線維化が同マウスで亢進するかを検討した。残念ながら、野生型とMieapノックアウトマウスで有意な差を示すことができなかった。 ヒト肺検体を用い、疾患肺と正常肺でMieapタンパクの発現差を検討したが、市販の複数のMieap抗体を用いて染色を試みるも定量検討できる抗体を見つけることができなかった。 以上より、残念ながら当検討は有益な結果を出すことができなかった。
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