研究課題
本研究は、薬剤獲得体制との関連性が明確でない「アポトーシス(細胞死)」に着目した新しい視点から薬剤獲得耐性の分子病態メカニズムを解明し、根治を目 指す新規薬物療法を開発することが目的である。 ミトコンドリア経路を介したアポトーシスにおいてBCL-2ファミリータンパク質が重要な役割を果たすことが知られている。 ステップワイズ法を用いてEGFR-TKI(オシメルチニブ)に対する非小細胞肺癌細胞株PC9とH1975の薬剤耐性細胞を作成し、Cell viability assayにて薬剤感受 性・IC50を測定し、耐性化を確認した。親細胞株と作成した耐性細胞を用いて、ERK、FOXO3a、BIMを含むアポトーシス関連因子のウェスタンブロットによるタン パク質発現解析を行い、ERKによりリン酸化されたFOXO3aが核外(細胞質)へ移行してMDM2によるユビキチン化により分解され、FOXO3aの転写活性が抑制され、 BIMの発現が低下し、アポトーシス抵抗性となることを確認した。FOXO3aの核外への移行は、蛍光タンパク質GFPをつけた各細胞の作成とDAPIにてDNAを含む核の 染色を行い、蛍光顕微鏡にて観察・撮影して確認した。FOXO3aレンチウイルスベクターを用いてFOXO3aとBIMの遺伝子組み換え(ノックダウン、ノックアウト、 過剰発現)細胞を作成し、機能解析を行い、上記の結果を確認した。 現在は、治療候補薬剤として、Debrafenib、Trametinib、Bortezomibなどを使用して、薬剤感受性を測定し、新規薬物療法の候補薬剤を同定し、in vivoでの実験を継続中である。
2: おおむね順調に進展している
Covid-19による自粛期間等のため一時的に実験ができない状態があり、やや予定より遅れた時期もあったが、概ね順調に推移している。
2022年度は、前年度から行っているゼノグラフトモデルマウスを用いたin vivo実験、臨床組織検体 (EGFR阻害剤耐性肺癌患 者)におけるアポトーシス調整因子の免疫染色と臨床情報効果の有効性のエンドポイント(PFS、OS、ORRなど)との相関についての検討を継続し、学会発表(肺癌学会、分子生物学会など)、論文発表を行う予定である。
細胞用ディッシュ、薬剤、マウス等概ね予定通りの予算を執行した。残額が生じた が、ほぼ予算通りであり、翌年以降の物品費用に充てる予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Anticancer Research
巻: 42 ページ: 709~722
10.21873/anticanres.15529
International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 ページ: 4005~4005
10.3390/ijms22084005